現代サッカーにおいて戦術のトレンドは、いつでも数的有利を作ることにある。
数的有利は「根性で走る距離を伸ばして作る」のではなく、システム(フォーメーション)変更によるポジションチェンジを繰り返して作るのだ。
基本的は本シリーズ③で予想通りだったが、もう一度まとめ直してみよう。
【参照】③新生森保ジャパンの戦術予想
目指す守備戦術は「ゾーンプレスとカウンター」
筆者ビリーの目指す改良型カテナチオは4231などの4バックを想定していたが、森保ジャパンでは想定を上回るような343でハイプレスを駆使し始めた。ただし今のところラインコントロールが低いことで守備戦術が上手くはまらない模様。
いち早くラインコントロールを標準に戻し、守備戦術が機能してほしいものだ。
【参考】ビリーの目指す改良型カテナチオ
1.ハイプレスとショートカウンター
相手のディフェンスラインでのボール回しからプレスを掛けてボールを奪い、ショートカウンターを狙う。
4231でのハイプレスを想定していたが、森保ジャパンでは343で前線をWB含めて5枚まで増やせるハイプレスを敢行。今後も練度が上がれば恐ろしいカウンター戦術となるだろう。
2.中盤でのカテナチオとゾーンプレス
守備ブロック(現代のカテナチオとエリア戦術)を形成する。
【参考】現代のカテナチオとエリア戦術
3.守備戦術にはラインコントロールが足りない
しかしながら、日本代表にはラインコントロールが無いため守備戦術が未完成。
ラインコントロールについてはカタールW杯から話し続けているので割愛。
【参考】ラインコントロールと根性プレス
4.中盤でのカウンターに必要となる要素とは
現状では3のラインコントロールに加えボールを奪取してからパスの展開役とターゲットがおらず、またDFに落として逆へ展開するようなポストプレイでの展開もない。
中盤ではドリブルで運ぶべきシーンでも無理にパスを出そうとするためボールを運ぶようなドリブルも足りない。
森保ジャパンの守備からカウンター戦術では、3と4が今後の課題となるだろう。
目指す攻撃戦術は「アイソレーションと連携攻撃」
Liveで試合を見ている時は左サイドのWG三笘とSB伊藤が無駄に入れ替わり、お互いが良さを消し合っている様に見えた。
右サイドのWG堂安とSB菅原の動きは無駄がなく、完成に近いが今後練度は上げられると言った具合。
録画を何度も見て森保ジャパンの戦術の意図を予想すると、全員の練度次第で期待と希望しかない恐ろしいシステムと連携が出来上がる未来が見えた気がした。
ビリーは「森保ジャパンの戦術が完成すれば、FIFAランク10位以内に入る可能性を秘めている」と判断した。
1.ドリブラーを活かすためのビルドアップと連携攻撃
現在の日本代表には世界に名を轟かせる三笘薫などのドリブラーがいる。
三笘ほどではなくても伊東や堂安、久保など恐ろしい才能を持った選手がいて、最近では誰を先発させるか迷うほどだろう。
そこで日本代表の攻撃戦術は、それら優秀なドリブラーを独立させて仕掛けるアイソレーションを優先させるべきだろう。
加えて、アイソレーションを活かすためにも組織的な連携攻撃を織り交ぜることになる。
2.日本人らしい組織戦術は完成目前!?
歴代の外国人代表監督たちは「規則的な動きや組織的な連携などの集団性」に日本人の良さを見出だし、日本人監督やコーチたちもそう思う節はあった。
世界のニュースやカタールW杯を見てもそう思うことはあり、もはや間違いないだろう。
森保ジャパンでは後半からの交代戦術を用いてきたが、偽SBを試したりビルドアップを突き詰める辺り連携攻撃も増やしていくだろう。
最終的にアイソレーションがその連携攻撃の一つの選択肢になる時、日本人らしいサッカーが完成することになる。
3.『組織的な連携攻撃とアイソレーションの共存』が目標
現代サッカーでは絶対的な支配者とも言えるCMFが居なければ中央での突破は難しい。
現在では鎌田や久保、中島翔哉がCMFの候補だが、組織的な連携のレベルが上がらなければ支配者の能力があっても活かすことはできない。個人的な推しは中島翔哉である。
例えば上図左側のように、右サイドのビルドアップから『組織的な連携攻撃』している最中に鎌田や菅原、守田に落とし、そこから左サイドでアイソレーション状態の三笘へとサイドチェンジを行い単独で仕掛けるなど、この『右サイドの組織的な連携攻撃と左サイドのアイソレーションの共存』の形を作ることが目標のビルドアップとなる。
アイソレーションは左右それぞれで行えるため、相手や時間帯によって一番効果的な攻撃を選択することになる。
【参考】速攻と最小のタッチ数での攻撃戦術
そして全員の練度が高まると中央突破も出来る日が来るだろう。
数的優位を作るためのシステム変更とビルドアップ
現在森保ジャパンでは前述の『組織的な連携攻撃とアイソレーションの共存』を作るためのビルドアップを画策しており、CBが足りなかったウルグアイ戦では守備時のシステム4411から攻撃時の343への可変システムを採用している。
カタールW杯からウルグアイ戦を見る限り中盤でボールを奪い攻撃へと切り替える際は割とポゼッションができるのだが、GKからビルドアップの際に数的有利を作る事ができない。
この原因は、現代サッカーのトレンドでもあるGKからのシステム変更が足りないのだ。
ここで新生森保ジャパンが目指すビルドアップのためのシステム変更を整理しよう。
1.GKからのビルドアップのシステム
本シリーズ③の最後で話したようなGKからビルドアップするシステム変更自体が足りない。上図左側はGKからの展開システムの一つの例。
【参照】GKからつなぐシステム変更
2.中盤でのビルドアップのシステム
上図左側「1.GKからつなぐシステム」から右側「2.中盤でつなぐシステム」にシステム変更し、森田や鎌田から三笘、浅野、堂安がパスのターゲットになる速攻が課題。右側では3331(3313)となっているが、鎌田のポジショニングにより343と同様のビルドアップに変更することもできるため、ゲームメイクをする鎌田の見せ場とも言える。
【参照】中盤でのビルドアップのトレンド
3.CMFが起点となる攻撃を作る
現状の日本代表ではまだこの段階ではないが、2.までのビルドアップの練度が高まればCMFがWGとFWに対してパスを出す条件が整う。
【参照】前述の『組織的な連携攻撃とアイソレーションの共存』
カウンターや速攻に失敗し、ポゼッションサッカーをしている状態から速攻を仕掛ける際のシステムとは。
【参考】ディフェンスラインからの速攻
4.偽SBでSBがゲームメイクに加わるシステムを構築する
新生森保ジャパンの攻撃戦術の目標は、「343と両サイドでWGがアイソレーションになるシステム」である。
今回のように4バックからスタートする場合は3バックへシステム変更し、偽SBがWBやSHのようにゲームメイクに加わることで攻撃時は343に変形するのだ。
【参考】
・ディフェンシブサードでGKからのポゼッションと偽SB
・ミドルサードでのポゼッションと偽SB
勿論SBとWGがどう入れ替わっても同じゲームメイクが理想だが、SB(伊藤と菅原)がパサーとして、WG(三笘と堂安)がドリブラーとして優秀だったことを考えると、最後の仕掛けではWGが前に出ている状況を作ることが望ましい。
現代のカテナチオなど中央で厚い壁を作られる場合は、CMFもFWと並び、偽SBがパサーとなる攻撃も見れるだろう。
【カテゴリー】
第2次森保ジャパンの初陣「キリンチャレンジカップ」