2023年3月現在日本代表には未だにGKからのビルドアップが確立されておらず、結局相手のプレスにハマって大きく蹴り出すことが多い。第2次森保ジャパンでもGKからのビルドアップを課題としているため、ここで世界のビルドアップのトレンドを分析してみる。
数的有利を作る中盤でのシステム変更
カタールW杯以前から日本ではDM(ディフェンシブミッドフィルダー、ボランチ)がSB(サイドバック)の位置にずれ込むビルドアップの方法を採用してきた。GKからのビルドアップも幾つかのシステムがあるが、今回はその次に該当する中盤でのビルドアップから、シュートへ繋げる仕掛けまでのビルドアップを紹介する。
【参考】GKからのビルドアップ
世界のトレンド戦術は偽SB!?
偽SB(にせサイドバック)とは、バルセロナ時代のグラウディオラ監督が提唱したもので、SBがDMなど主にインサイドハーフとしてポジショニングをとること。状況に応じてSH、WBのように動くこともある。
図.1 ディフェンシブサードからミドルサードへのシステム変更
●上図左側「GKからのビルドアップ」
「GKからのビルドアップ」と同様で、役割は以下となる。
・WGの三笘と堂安が相手のディフェンスラインを押し下げる役。
・鎌田と浅野が中央でGKから大きく出すパスのターゲット役。
・その他戦で繋がれたDF、MFがいわゆる鳥籠(とりかご)でつなぐ役。
●上図右側「中盤へのビルドアップへの移行」
二列目(伊藤、守田、菅原)に一度ボールが渡り、システム変更からディフェンスライン(瀬古、遠藤、板倉)が作られた状態。
ここでSB(伊藤、菅原)がWBやSHにポジションチェンジをするのだが、世界ではこのSBを偽SBと言うようだ。
中盤でのビルドアップとWGとSBのポジションチェンジ
中盤でビルドアップをする際のシステム変更(図1枚目左側から図3枚目左側までの間)で、WG(三笘や堂安)とSB(伊藤や菅原)が入れ替わることが多々ある。
図.2 偽SBと中盤のポジションチェンジ
WGとSBが入れ替わった後は再び入れ替わることまでを想定しなければならないが、左サイドはまだその段階に到達していないようだ。
もし戦術の練度が上がれば「偽SBがライン裏へのスルーパスを出す程」になれば、FWやWGの三笘と堂安だけではなくCMFの鎌田までがライン裏へ走るシーンも出来るかもしれない。
図.3 攻撃する時の縦ラインのイメージ
新生森保ジャパンのビルドアップと偽SBの意図とは
恐らく今後も森保ジャパンではハイプレスからのショートカウンター戦術が基本となるため、WBが前線でプレスを掛けやすい343とWBのシステムが基本となる。
森保ジャパンでの偽SBはWBが守備的な位置に居る時の動きと似ているため、4バックの状態でも取り入れたのだろうと分析。
ここでは以下のキリンチャレンジカップを分析した時の話題。
【参考】第2次森保ジャパンの初陣「キリンチャレンジカップ」
森保ジャパンの理想のシステム(暫定版)
仮に森保ジャパンではこのシステムとメンバーが理想だとしよう。
伊東
久保 堂安
三笘 菅原
守田 遠藤
瀬古 冨安 板倉
シュミット
この343のシステムは、オプションで4231にもシステム変更できる。
伊東
三笘 久保 堂安
守田 遠藤
瀬古 冨安 板倉 菅原
シュミット
4231から343へのシステム変更でWGを作るための偽SB
ウルグアイ戦では怪我人により3CBにできなかったため、2CBの4231のシステムだった。CBが常に3人揃うとも考えられず、また相手によってはシステム変更をした方が良いと考えられる場合は、4231に変更することも考えねばならない。
しかし、常に自分たちが理想とする343のシステムを出来るように準備する戦術として、偽SBが必要となったのだ。
浅野
三笘 鎌田 堂安
守田 遠藤
伊藤 瀬古 板倉 菅原
シュミット
そこで攻撃時はディフェンスラインを上げて遠藤が中央のCBに入り、中央がダイヤモンド型の343へシステム変更をした。
以下の図では伊藤と菅原を大げさに内側に書いてあるが、偽SBを取り入れることで4バック(4DF)でも三笘や堂安がWGとして仕掛けられるように取り入れたのだろう。
浅野
三笘 鎌田 堂安
伊藤 菅原
守田
瀬古 遠藤 板倉
シュミット
守田や鎌田が上下することで343で中央の並びも変わり、全体をゲームメイクする役割だ。
このシステム変更が出来ればいつでも343を作ることが出来るようになり、常に守備的で攻撃的なシステムになるわけだ。