サッカー日本代表の強みとは「個の強さと攻守バランスの取れた連携」だと思う。当サイトでいつも書いているが、各選手が欧州サッカーでスタメンを勝ち取る存在となった今、日本代表が中南米W杯で上位に入るには「戦術的な連携の精度向上と戦術の種類の増加、その中で個の存在を押し出すこと」にあると思う。
今回のオーストラリア戦では、現在の日本代表の悪い部分が全て出た試合に見えた。
※以下、敬称は略。
日本代表が目指す戦術的な連携と実際の乖離
乖離(かいり)とは簡単に「離れている様」を言うのだが、日本代表が目指す戦術と現実の試合では余りにも大きな差があった。
4バックになりきれないディフェンスライン
オーストラリア戦では特に、ビルドアップの際にDM(ディフェンシブミッドフィールダー)の守田と田中がはっきりとしたポジションチェンジを行えなかった。
上田
三笘 堂安
南野 久保
田中
町田 守田 谷口 板倉
鈴木
前サウジアラビア戦ではビルドアップの際に必ずではないがこのようなシステム変更を行うことがあった。ビリーはこのシステム変更を意図的に行ったものと考えていたのだが、Youtubeの戦術界では偶然の産物と考えられていた。
このシステム変更なのだが、今回は板倉が開かないことによって機能しなかったように思われる。
直近で大きな課題の一つは、ビルドアップのシステム変更だろう。
【参照】GKからのビルドアップとシステム変更
日本代表対策を徹底するオーストラリア
日本代表にはビルドアップの際にディフェンスラインからボールを引き出すことに難点があるため、オーストラリアはラインコントロールを高めに設定し、中央を固め、ミドルサードで日本代表のディフェンスラインからDMへボールを入れさせないことを徹底し、プレスを掛けるとボール奪取に効果的だった。
すると前線へのパスは滅多に出なくなり、出てもPAの横のバイタルエリア(センタリングゾーン)のみとなった。
【参照】PAの周りにあるバイタルエリアとは
三笘選手を隔離させてエリアを限定
三笘はビルドアップのパスワークとポジショニングに難点があるため、オーストラリアには二つのディフェンスプランがあったように思う。
1つ目は、三笘がドリブルを出来ない状態でボールを持たせてパスミスなどボールのロストを誘う。
2つ目は、三笘はポジショニングに難点があるためマンツーマンを付けながら隔離させれば左サイドが無視できるようになる。オーストラリアは中央と右サイドでゾーンプレスが出来るようになる。
結果として三笘は中に入ってボールを触ろうとするが、味方とポジションチェンジをすることなくプレイエリアにまで入ってしまい、自分もオーストラリアのゾーンプレスに参加することになっていた。
日本代表はチームの決まり事が足りない
故オシム監督が「日本人は協調性があり、何よりも勤勉である」なんて言葉を残した。筆者ビリーもそう思うのだが、日本代表というチームには一定の決まり事がまだまだ不十分だと思われる。
個人のレベルが高くなったがゆえに、その個人の能力を活かすための攻撃戦術を徹底させる必要がある。
足りないのはまさにその連携だ。
組織戦術の連携と個の存在
本田圭佑氏が代表の頃よく「流動性」と言う言葉が飛び交った。
流れの中でポジションチェンジを行い、流れるようなパスワークで相手のマークを剥がし、ディフェンスラインを崩してゴールを狙うと言う意味である。
この頃に足りなかったのは、ポジションチェンジで入れ替わった先のポジションをこなす能力(ポリバレント)とシュートへのチャレンジだった。
日本代表に足りない連携とは個を活かす戦術
岡田監督時代は「誰が出ても同じ戦術で相手を圧倒する」と言っていたが、それでは選手の良さや特徴が消えてしまう。
逆に個人を活かすための組織戦術を徹底すれば良い。
それがアイソレーションと言う戦術なのだが、日本代表ではどうにも採用する気が無いように思われる。
システム3-4-3の限界と発展
現在は本職がWGの選手をWBに起用しているが、SBの選手を混ぜるべきだろう。
格下相手には通用するが、ラインコントロールに加わることや強豪相手のWGが仕掛けてきた時の対処に不安が残る。
現在の3-4-3で行くなら先発は中村敬斗
三笘はドリブルは超一流であり、得点能力やアシスト能力は世界でも有数であることは実証済みだ。
しかしディフェンスは勿論ビルドアップやパスワークに課題が残り、強豪相手にWBやSHとして先発させることは疑問が残る。
そこで先発させるならビルドアップやパスワークに安定感がある中村敬斗を推す。
三笘を出すなら戦術三笘
三笘出る時は、戦術三笘のシステムを徹底させるべきだろう。今までの日本代表であれば、三笘にパスワークとビルドアップ、ディフェンスを徹底させ、周りと同じことをさせるだろう。
それでは三笘個人の負担が増すだけなので、三笘に合わせた戦術を考えた方が良い。
上田
南野 久保
三笘 堂安
守田 田中
町田 谷口 板倉
鈴木
三笘はビルドアップに加わらずドリブルでのアタックを最優先するべきなので、アイソレーションを行い高めで待つべきだと考える。
現在の3-4-3(3-4-2-1)のシステムは上図であり左右を対象的に考えているが、三笘を使うならば以下の3-4-3を検討しても良い。
オーストラリア戦で三笘に合わせてシステム3-4-3(3-4-1-2)に変更してみる。
三笘 上田 .
南野
SB 堂安
守田 田中
町田 谷口 板倉
鈴木
もし三笘のドリブルを活かすためにアイソレーションを行うのであれば、上田を中央付近、三笘を左サイドでWGの配置にし、左WBをSBにすれば守備時にも4バックを作ることが出来るため安定感が出るだろう。
以下は4-4-2の守備陣形を作った例
三笘 上田
守田 南野 田中 堂安
SB 町田 谷口 板倉
鈴木
三笘のドリブルを活かすためのシステム(オプション)
WBのポジションにSBが本職の選手を入れると以下のようになる。
三笘 久保
南野(鎌田)
SB SB
守田 田中
町田 谷口 板倉
鈴木
このシステムだとディフェンスラインからのビルドアップ時にはWB(SB)が下がり、ボールが高めの位置に来た際は、WB(SB)と田中が任意で上がれば人数も掛けることが出来るようになる。
三笘 久保
SB 南野 SB
守田 田中
町田 谷口 板倉
鈴木
今後の日本代表は「突出した能力をもつ選手の良さを出し、個人の悪さを組織で隠す攻守の戦術」が求められる。
その戦術を明確に打ち出し共通認識とすることが森保監督に求められるだろう。