カテナチオは本来、1950-1960年代にイタリアで流行した堅守速攻の戦術で「かんぬき」の意味を示す言葉らしい。2000年前後以降、イタリア代表が行う堅守速攻の守備戦術もカテナチオと言うようになった。
かつてイタリアが行っていたカテナチオは「守備時に4-4-2もしくは4-4-1-1のシステム(フォーメーション)」になり、上図のようにPA(ペナルティーエリア)前で守備陣形の二列を作り、相手の攻撃が上がってくるのを数的有利を作った状態で待ち構えていた。
【カテナチオが堅守速攻の戦術と言われる理由】
上図のカテナチオでは、自陣のPA前まで引いて守るため、敵陣のほぼ全てが空いた(オープンな)状態となる。
カテナチオが堅守速攻の守備戦術と言われるようになった理由は、この広大に空いたスペースへカウンターがしやすくなるためである。
カテナチオは待ち構えてゾーンプレスを仕掛ける守備戦術
そもそもゾーンプレスとは、ボールホルダー(ボールを保持している人)に対して人数を掛けて囲みボールの奪取を目指す守備戦術である。
イタリアのカテナチオは、PA前で守備の二列を作り人数の多いところへおびき寄せてゾーンプレスを掛けていた。
ゾーンプレス対策のドリブル突破
メッシやネイマールなど特別な選手は、守備側の数的有利なはずの各エリアをドリブルで突破する。
守備側が数的有利を作ったがために攻撃側のフリーとなった選手へパスを出されると、途端に不利な状況に陥る。
ゾーンプレス対策のワイドプレイ
またゾーンプレス対策として有名な戦術が、攻撃側の選手間がフィールドいっぱいに広がるワイドプレイである。
カテナチオにラインコントロールを加える
イタリアのカテナチオはPA前で二列に並ぶ守備戦術だったが、ラインコントロールを組み合わせることで図①のようなバイタルエリアの前でもカテナチオを行うようになり、エリア戦術として進化したのだ。
図①「カテナチオとデイフェンスラインの理想の高さ」
赤いエリア手前、中盤のミドルサード内でのラインコントロールが理想と言われる理由は、ミドルシュートでも得点の危険が少なく、ディフェンスライン裏へのスルーパスも対処しやすいためである。
図② カテナチオと実践方法
図では4-4-1-1で構えているが、実際は前二人が横に並ぶ4-4-2の方が多い。下の図②では、数的有利がわかりやすくなるように、わざと4-4-1-1にしてみた。
【カテナチオの実践】
ラインコントロールを行いミドルサードでカテナチオを作った場合を説明をする。
- 相手のボールが赤いエリアに入るのを防ぐため、ディフェンスラインを上図に設定して相手が攻めてくるのを待つ。
- 次に前の二人でどちらかのサイドに追い込む形をとり、青色楕円へボールを誘導する。
- 青色楕円では4(守備側)対2(攻撃側)など数的有利が出来るので、追い込んでボールの奪取を目指す。
図③ カテナチオとゾーンプレスを組み合わせたエリア戦術の例
相手の攻め方やメンバーによっては有利なエリアが存在することになるため、「中央には絶対に入れさせない」と言った決め事は難しい。
そのためエリア戦術としては、ラインコントロールを合わせて下の図③のようにバイタルエリアを使わせないように決め事を作る。
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現代のカテナチオは繊細な守備戦術
まず相手チームにディフェンスラインの裏(赤いエリア)への飛び抜けが得意な選手がいると、ディフェンスラインを高めにできない。
そのためディフェンスラインをPA(ペナルティーエリア)まで押し下げられることも多く、相手によってラインコントロールの高さを変えざるを得ない繊細な守備戦術でもある。
赤いバイタルエリアに押し込まれた場合
押し込まれてディフェンスラインを下げられた後の対応は、攻撃側の選手によって異なる。
①まず中央へ誘い込んでゾーンプレスで潰す場合の相手選手の特徴。
- 中央にドリブルが得意な選手が居ない。
- サイドでドリブルで仕掛けたり、センタリングを得意とする選手がいる。
- センタリングを受けやすい背の高い選手がいる。
②次にサイドラインに追い込んでゾーンプレスで潰す場合。
- 中央にドリブル、ポストプレイが得意な選手がいる。
- 裏に抜ける選手とスルーパスを上手く出せる選手がいる。
この様にカテナチオとは「相手選手の特徴により、追い込むエリアに優先順位をつけるエリア戦術のこと」である。
数的有利を築いた上でボールの奪取を狙う戦術が現代のカテナチオだ。
カテナチオとラインコントロールでバイタルエリアを使わせないように幾つかのエリアを設定し、ゾーンプレスと組み合わせるとカタールW杯までに流行した守備戦術の改良型カテナチオへと近づく。
【参照】超攻撃型の守備戦術『改良型カテナチオ』とは
※改良型カテナチオとは当サイトの造語です。