カテナチオは本来、1950-1960年代にイタリアで流行した堅守速攻サッカーの戦術で「かんぬき」の意味を示す言葉らしい。ところが2000年前後以降、イタリア代表が行う堅守速攻の守備戦術もカテナチオと言うようになった。
イタリア人監督のザッケローニ氏が就任した時、日本代表でもこの守備戦術が行われると思ったのだがはっきりとは行われなかった。
ここでのカテナチオは、独自の解釈も含まれていますのでご注意ください。
守備戦術の『カテナチオ』とエリア戦術
現代のカテナチオは「守備時に442もしくは4411のシステム(フォーメーション)」になり、ラインコントロールを行うことでバイタルエリアを使わせないように守る守備戦術のこと。
図①「カテナチオの高さ」
カテナチオの基本とエリア戦術
バイタルエリアとは得点に繋がりやすいプレイエリアを指し、特に「赤色のシュートエリア」と「黄色のセンタリングエリア」のことを言う。
例えばミドルシュートが得意な選手がいれば赤色のエリアは広がり、センタリングが得意な選手がいれば黄色のエリアは広がるなど、バイタルエリアは相手によって変わる。
カテナチオの基本は各エリアに誘い込む
カテナチオでは「相手の特徴に合わせてどこでボールを奪うか」を意識するため、ディフェンスのエリア戦術とも言われる。
図②の赤いエリア手前、中盤のミドルサード内でのラインコントロールが理想と言われる。
【参考】
図②「カテナチオと追い込むエリア」
- まずは相手のボールが赤いエリアに入るのを防ぐため、ディフェンスラインを上図に設定して相手が攻めてくるのを待つ。
- 次に前の二人でどちらかのサイドに追い込む形をとり、青色楕円の袋小路に追い込んでボールを奪取する。
この様にバイタルエリアを使わせないように幾つかのエリアを設定し、数的優位を築いた上でボールの奪取を狙うのだ。
図③「カテナチオと潰すエリアの例」
カテナチオは相手によって変わる繊細な守備戦術
まずディフェンスラインの裏(赤いエリア)への飛び抜けが得意な相手選手がいると、ディフェンスラインを高めに設定することができない。
そのためディフェンスラインはペナルティーエリアまで押し下げられることも多い。
赤いエリアに押し込まれた場合
押し込まれてディフェンスラインを下げられた後の対応は、攻撃側の選手によって異なる。
①まず中央へ誘い込んでゾーンプレスで潰す場合の相手選手の特徴。
- 中央にドリブルが得意な選手が居ない。
- サイドでドリブルで仕掛けたり、センタリングを得意とする選手がいる。
- センタリングを受けやすい背の高い選手がいる。
②次にサイドラインに追い込んでゾーンプレスで潰す場合。
- 中央にドリブルが得意な選手が居る。
この様にカテナチオとは「相手選手の特徴により、追い込むエリアに優先順位をつけるエリア戦術のこと」である。
ゾーンプレスで追い込んでも突破されると
メッシやネイマールなどの様にドリブルが得意な選手は、数的優位を作ったはずの各エリアを突破し、数的優位を作ったがためにフリーとなっている選手へパスを出されたり、ディフェンスラインを乱すために脅威と言える。
カテナチオの堅守は速攻にも向いている
図①のカテナチオは赤いバイタルエリアを使わせないためにディフェンスラインを設定した。
この位置を基準にボールを奪うと、相手のゴールに近いためにカウンターがし易いのだ。
カテナチオは攻守一体となった堅守速攻の戦術なのだ。
日本代表の守備戦術は
日本代表でもカテナチオを取り入れようとした監督は多い。
2005年にオフサイドのルール変更前では、トルシエ監督がはっきりとカテナチオとは言わなかったと思うが、ラインコントロールとゾーンプレスを取り入れようとしていた。
ルール変更後では、タケーシ・オカーダから始まり、ザッケローニで継承、イタリア人のハリルホジッチは本当のエリア戦術とも言えるカテナチオに発展させようとした。
日本代表の消えたラインコントロール
ところが日本ではオフサイドのルール変更後、ラインコントロールの文化が無い。
全体でマンツーマンを選択したジーコ監督以来、ディフェンスラインはほぼマンツーマンであるため中盤ではゾーンプレスになり得ず、本当のカテナチオにはなり得ないのだった。
現在でも日本のゾーンプレスは根性で走る距離を伸ばす『根性プレス』のままなのである。