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④【2023年3月25日キリンチャレンジカップ】日本vsウルグアイ 第2次森保ジャパンの戦術を分析

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 かつて日本代表は戦術的な欧州国には強いが、個人技とフィジカルで強い南米には手も足も出ないイメージがあった。
日本がラインコントロールを取り入れないまま戦術で苦悩する中、欧州はフィジカルとデータ戦術を、南米は組織戦術を加えて進化し続けていた。

 カタールW杯で日本代表の戦術は世界で取り残され事実上ガラパゴス化していることが分かったのだが、この南米のウルグアイ相手にかつてのイメージがどの様に変化するのだろうか。

 カタールW杯から次回大会に向け、第2次森保ジャパンの初戦はFIFAランク16位で南米のウルグアイ。日本のFIFAランク20位。依然として36歳のスアレスがエースの様に感じるが、世代交代のためか今回の招集は無し。

新森保ジャパンのシステム(フォーメーション)と戦術を分析してみよう。

日本代表とウルグアイ代表のスタメン発表

 キリンチャレンジカップで初戦を迎えた新森保ジャパンのスタメンは以下。
FWを前田、CMを久保と予想していたが、FWに浅野、CMは鎌田だった。

前田は怪我の悪化により代表から離脱、角田が怪我で招集を辞退し、久保は体調不良だそうだ。

また怪我をして招集を辞退したアーセナルの冨安だが、怪我は今シーズンを棒に振るほどの大怪我で専門家にると「内側側副靭帯の損傷」と予想されている。

日本代表のスタメンとシステムの4231

 今回の代表では大きく世代交代がされたDF陣に注目が集まる。
カタールW杯グループステージのコスタリカ戦で流れに乗れなかった伊藤だが、本職のSBとして起用されることで三笘もいる左サイドがどの様にビルドアップされるのだろうか。

交代戦術により後半からの出場が多かった三笘だが、先発出場でも相手を振り切ることが出来るだろうか。

三笘はカタールW杯では体調不良だったらしく、全試合での先発は難しかったそうだ。

 また前回の記事でも紹介した新たな戦術の結果はどうなるだろうか。

浅野
三笘 鎌田 堂安
守田 遠藤
伊藤 瀬古 板倉 菅原
シュミット

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森保ジャパン初招集のメンバーとコーチ陣

DF バングーナガンデ佳史扶(21)FC東京
DF 町田浩樹(25)ユニオンSG/ベルギー
DF 藤井陽也(22)名古屋グランパス
DF 半田 陸(21)ガンバ大阪
FW 中村敬斗(22)LASKリンツ/ドイツ

斉藤俊秀 コーチ
名波 浩 新コーチ
前田遼一 新コーチ
松本良一 フィジカルコーチ
下田 崇 GKコーチ

横内昭展 元コーチ → ジュビロ磐田監督
上野優作 元コーチ → FC岐阜監督

ウルグアイ代表のスタメンとシステム433

 かつての個人技だけの南米とは時代が変わりチーム全体の組織的な連携も上がっている中、MFからWG(FWとSHの間)まで起用にこなすバルベルデが攻撃の起点となることが予想される。

ゴメス
  ロッシ     ペリストリ
 ベシーノ バルベルデ
ウガルテ
オリベラ コアテス ブエノ ゴンサレス
ロチェ

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ウルグアイ戦は新メンバーの相性と新旧戦術の融合

 ウルグアイ戦はカタールW杯後の初戦のため、入れ替わったSBと新戦術を試した。
まずはメンバーに関して、右SBの菅原は酒井宏樹と争うことになり、酒井はCBと兼任メンバーとなるだろう。

上手く言った右サイドのSB菅原とWG堂安のコンビは、SBが追い越しすぎず、入れ替わりすぎず、流れでしっかりともとに戻るスタイルができていた。

試合序盤からのハイプレス

 カタールW杯同様に、日本は高い位置から相手にプレスを掛けるハイプレスを実施。
FWが代わってもハイプレス戦術は行うようだ。

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単独攻撃のアイソレーション

 1:54から三笘へとボールが渡り単独のドリブルで相手陣地へ仕掛けるが、ゴール前で浅野とポジションが丸かぶりでシュートまで行けず。
日本代表は単独で仕掛けさせる戦術のアイソレーションに不慣れな様子。

 このシーンを見て例えると「三笘、浅野、その他が居てドリブルで中央へ入って仕掛ける場合、ボールを持たない味方がマークを外すための動きをする」など「こういう場面ではどういう仕掛け方をする」など連携の打ち合わせがないと予想する。

世界のトレンド戦術と日本代表の戦術

 3:06から日本はディフェンスラインにボールを戻し、最後列からの攻めを作る。
基本的には4231のシステムだが、攻める場合は343のシステムに変型する可変システムのようだ。

三笘   浅野   堂安
伊藤 鎌田 菅原
守田
瀬古 遠藤 板倉
シュミット

この4231から343や352への可変システムはカタールW杯でも流行しており、日本代表のサイドアタッカーを活かす最適の可変システムと思われる。
FWの浅野はCMF鎌田辺りまで下がることもあり、WGの三笘と堂安が相手のディフェンスラインを押し下げる役、またSBの伊藤と菅原がWBやSHのような役割を担う。

 カタールW杯で戦術的にガラパゴス化していた日本代表が森保監督により世界の戦術を取り入れようとしていることが見て取れる。

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SBをWBとSH、WGとして活用する「偽SB」化

 右サイドのWG堂安とSB菅原は問題なく適応したのだが、どうやら左サイドのポジションチェンジ(入れ替わり)がおかしい。
SB伊藤とWG三笘の上下の位置が入れ替わるのだが、下図のように縦のラインを決めて入れ替わっているようだ。
※WG…SH(サイドハーフ)とFW(フォワード)の中間のポジション。
WB…SHとSBの中間のポジション。

浅野
伊藤 鎌田 堂安
三笘   守田   菅原
瀬古 遠藤 板倉
シュミット

SBが内側に入って高めに上がりSHへ、WGがサイドライン際を下がりWBへポジションチェンジをするイメージと言えば分かりやすいだろうか。

WGはライン際、SBは一つ中に入り上下を繰り返し、追い越すと場合によってはライン際に開く。

浅野
←伊藤  鎌田 堂安
三笘   守田   菅原
瀬古 遠藤 板倉
シュミット

勿論試合時は左右非対称だが、このポジションチェンジでは流れによって三笘や堂安がWBからDFになることもあり、その状態から攻撃に移る時に伊藤と菅原がSHやWGになることもある。

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サイドアタッカーがサイドアタッカーではなくなる

 このポジションチェンジは本来、相手のマークやポジションをずらしたり相手の連携を乱す効果があるのだが、日本代表の現在は本来の役割を見失っている様に見える。

「プレイが切れると最初のシステムに戻る」が、プレイが継続するとWGとSBが入れ替わる時間が増え、三笘や堂安らサイドアタッカーは仕掛けるドリブルではなくハイプレス時やビルドアップのプレイが多くなる。

 理想は「SBとWGが入れ替わったら、再びプレイの中で入れ替われば良い」のだが、動き直しがないために入れ替われていない。

プレイが切れればサイドアタッカーに戻るが、切れることの方が少ないだろう。

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課題は左サイドの三笘と伊藤のポジショニング

 カタールW杯では左CBのバックアップメンバーだったSB伊藤とWG三笘は多くの課題が残る結果となった。

多くの人が「SB伊藤がWB三笘の良さを消している」と書いていたが、その原因はWGの三笘にもある。

三笘の動き出しが遅すぎるため、伊藤も「やむなくさらに上がるしか無い、さらに下がるしか無い」を繰り返し、結果として伊藤が上がりすぎ、下がりすぎの状態だった。

左サイドを崩した原因は三笘と伊藤のビルドアップ時のポジショニングである。

上図左側は現状を表し、WG(三笘と堂安)は上下のみ、SB(伊藤と菅原)は赤いゾーンで動く。上図右側は改善案で、WGが青いゾーン、SBが赤いゾーンで入れ替わりを少なくした状態。

現状を活かすなら無駄に追い越さない

 もし現状を活かすのであれば、SBがWGを追い越さない方がWGがサイドアタッカーとしてボールを触る機会が増えるだろう。

SBの伊藤と菅原はこの試合を見る限りパサーとして充分な能力があり、WGをパスで活かす能力がある。
そのため無理に追い越すのではなく、WGの三笘や堂安をアイソレーションで独立させドリブルで仕掛けさせたり、走らせる展開を作るような連携を作ると良いだろう。

つまりは『今までのSBでビルドアップの際に少し中にも入ってDMやSHの役割まで増えた』と考えた方が分かりやすい。
もちろん攻撃の際には内や外からWGを追い越すこともある。

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新生森保ジャパンのビルドアップと偽SBの意図とは

 恐らく今後も森保ジャパンではハイプレスからのショートカウンター戦術が基本となるため、WBが前線でプレスを掛けやすい343とWBのシステムが基本となる。

森保ジャパンでの偽SBはWBが守備的な位置に居る時の動きと似ているため、4バックの状態でも取り入れたのだろうと分析。

ここでは以下のキリンチャレンジカップを分析した時の話題。
【参考】第2次森保ジャパンの初陣「キリンチャレンジカップ」

森保ジャパンの理想のシステム(暫定版)

 仮に森保ジャパンではこのシステムとメンバーが理想だとしよう。

伊東
久保  堂安
三笘      菅原
守田 遠藤
瀬古 冨安 板倉
シュミット

この343のシステムは、オプションで4231にもシステム変更できる。

伊東
三笘 久保 堂安
守田 遠藤
瀬古 冨安 板倉 菅原
シュミット

4231から343へのシステム変更でWGを作るための偽SB

 ウルグアイ戦では怪我人により3CBにできなかったため、2CBの4231のシステムだった。CBが常に3人揃うとも考えられず、また相手によってはシステム変更をした方が良いと考えられる場合は、4231に変更することも考えねばならない。

しかし、常に自分たちが理想とする343のシステムを出来るように準備する戦術として、偽SBが必要となったのだ。

浅野
三笘 鎌田 堂安
守田 遠藤
伊藤 瀬古 板倉 菅原
シュミット

そこで攻撃時はディフェンスラインを上げて遠藤が中央のCBに入り、中央がダイヤモンド型の343へシステム変更をした。

以下の図では伊藤と菅原を大げさに内側に書いてあるが、偽SBを取り入れることで4バック(4DF)でも三笘や堂安がWGとして仕掛けられるように取り入れたのだろう。

浅野
三笘  鎌田  堂安
伊藤  菅原
守田
瀬古  遠藤  板倉
シュミット

守田鎌田が上下することで343で中央の並びも変わり、全体をゲームメイクする役割だ。

このシステム変更が出来ればいつでも343を作ることが出来るようになり、常に守備的で攻撃的なシステムになるわけだ。

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試合の詳細分析と改善点

4-3-3のビルドアップのシステム変更からミドルサードでのシステム変更

 例えば下図左側のような433のシステムがある。

 SB(バングーナ、菅原)はSH(三笘、堂安)の後ろに位置し、攻撃時には大外でボールを受け、前にいるWGや内側のDMF(守田、鎌田、遠藤)にパスを出すと大外(ライン側)からWGを追い越すオーバーラップのイメージがあるだろう。

SBがWGを追い越すと大きくシステムが乱れてカウンターを受けやすくなる。

そのためDMの森田や鎌田が上がり、SBが内側にポジションチェンジすることで中盤の人数を増やす。

CB(伊藤、板倉)とDMFでアンカーの遠藤は最後尾でパス回しに徹することになる。

このSBのポジショニングを偽SBと言い、グラウディオラ監督がバイエルンミュンヘン時代にシステム変更の一つとして考案した。

加えて更に押し込むと、遠藤が0.5~1列上がることになる。

 2023年3月に行われたキリンチャレンジカップではDMFの守田と遠藤がボールに近寄りすぎるため、このシステム変更が機能しなかった。

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世界のトレンド戦術は偽SB!?

 SBがDMなど主にインサイドハーフとしてポジショニングをとること。状況に応じてSH、WBのように動くこともある。

 

図.1 ディフェンシブサードからミドルサードへのシステム変更

上図左側「GKからのビルドアップ」

「GKからのビルドアップ」と同様で、役割は以下となる。
・WGの三笘と堂安が相手のディフェンスラインを押し下げる役。
・鎌田と浅野が中央でGKから大きく出すパスのターゲット役。
・その他戦で繋がれたDF、MFがいわゆる鳥籠(とりかご)でつなぐ役。

上図右側「中盤へのビルドアップへの移行」

 二列目(伊藤、守田、菅原)に一度ボールが渡り、システム変更からディフェンスライン(瀬古、遠藤、板倉)が作られた状態。
ここでSB(伊藤、菅原)がWBやSHにポジションチェンジをするのだが、世界ではこのSBを偽SBと言うようだ。

中盤でのビルドアップとWGとSBのポジションチェンジ

 中盤でビルドアップをする際のシステム変更(図1枚目左側から図3枚目左側までの間)で、WG(三笘や堂安)とSB(伊藤や菅原)が入れ替わることが多々ある。

図.2 偽SBと中盤のポジションチェンジ

WGとSBが入れ替わった後は再び入れ替わることまでを想定しなければならないが、左サイドはまだその段階に到達していないようだ。

 もし戦術の練度が上がれば「偽SBがライン裏へのスルーパスを出す程」になれば、FWやWGの三笘と堂安だけではなくCMFの鎌田までがライン裏へ走るシーンも出来るかもしれない。

図.3 攻撃する時の縦ラインのイメージ