バーレーン戦をなんとか制した日本代表だが予選での戦術は見る影もなくり、グループステージではまるでアジアレベルでも苦戦し続けた一昔前の光景が広がっていた。現在FIFAランク17位の日本代表と21位のイランはほぼ同格であり、相性によっては大差をつけられかねない相手と言える。超攻撃的なイラン代表に対し、日本代表はどのような戦術をとれば良いだろうか。
【参考】優勝候補のイランは日本と同格以上!?
日本代表は予選と同じ戦術ができない!?その理由とは
CFが前線から守備を行うハイプレス、高い位置でボール奪取からのショートカウンター、中盤では二列になり守備陣形を整える現代のカテナチオ、コンパクトなカテナチオからボールへプレスを掛けるゾーンプレス、両サイドのSHやWGがドリブルで仕掛けるアイソレーション、無駄な攻撃を避けるポゼッション、アイソレーションとポゼッションを合わせた疑似カウンター…と簡単に上げただけでもこれだけの戦術を駆使していた。
※元日本代表監督のザッケローニ氏は、現代のカテナチオとゾーンプレスを合わせてエリア戦術と言っていた。
【参考】ザッケローニのエリア戦術
アジアカップで進化するはずだった戦術
紆余曲折から森保監督になりティキタカ(中盤で相手を崩すためのボール回し)の日本化を目指すようなポゼッションも見え始め、グループステージでは未習得の戦術を練習し、ノックアウトステージでは日本の戦術の完成が見えるかもしれないと一人盛り上がっていた。
【参考】ティキタカの日本化とは!?
アジアカップの開幕で見えた過去の戦術
ところがグループステージではこれら戦術が見る影もなく、ただ乱雑に仕掛けてはロストする(ボールを取られる)だけの日本代表になっていた。
日本代表と言えば10年以上前から無駄なボール回しが多く、相手の守備陣系が整うまでディフェンスラインで回す岡田武史監督の戦術が有名だった。
ボールとフィールドで日本代表対策!?
日本代表の戦術が一昔前に戻らざるを得なかった理由はあったようだ。
日本代表は足元の技術(足でのボールの扱い)がアジアでは頭一つ抜け出ているため、ポゼッションができるレベルだと考えられていた。
ところが初戦のトルシエ監督率いるベトナム戦でアジアのレベルが想像以上に高くなっていてポゼッションどころの話ではなくなっていたのだが、日本代表が予選で見せた戦術が出来ない理由はボールの変更とグラウンドにあった。
ボールは想像以上に跳ね、ロングボールが繋がらない。
バーレーン戦では両チームの選手が何もないところで滑って転ぶほどの荒れ模様、途中から怪我をするのではないのかと思いながら見ていた。
日本代表を潰すためかどうかは分からないが、中央でのポゼッションから長めのパスで左右へ振る疑似カウンター狙いの日本代表には明らかに不利で、高いセンタリングや押し込められた状態からのカウンターを狙うバーレーン代表には有利に見えた。
審判団も主審と副審がクウェート、第四の審判がイラク、VAR担当はUAE、とまさに中東の笛で判定が偏っていたのだ。
【参考】疑似カウンターとは
優勢に立ってからは本来の戦術が戻ってきた
後半途中に怪我から復帰してきた三笘が入ると試合は落ち着く。
あたかも三笘一人が試合展開を変えたかのように見えたかもしれないが、左SBの中山が下がり両サイドが安定したことで左右へボールを展開しやすくなっただけである。
左SBの中山は三笘の投入までずっと上がりっぱなしで、まるでSBの役割を放棄したかのように見えた。
これはもしかしたら森保監督の指示だったのかもしれない。
イラン代表のゾーンプレスにはワイドプレイで対抗!?
同格相手のイランには相手に合わせすぎた戦術をせず、日本代表の戦術を展開するしか無い。疑似カウンターは使いにくいかもしれないが、中央からショートパスを繋いで左右へ振れば、相手のディフェンスラインが広がり中央が活きる結果になるだろう。
イラン戦での試合展開の予想
現在の日本代表はボールへ寄り過ぎる傾向にある。
「ゾーンプレスだと当然では??」と思われたかもしれないが、守備とは異なり攻撃時はある程度の距離を保ち、展開が出来る状態を作らねばならない。
守備時のゾーンプレスはボールに寄せるが、攻撃時のコンパクトとはシステムのポジショニングを保ちながら一定の距離を保ち、マークを外して敵の間に顔を出すということである。
現在の日本代表は、守備時の距離感で攻撃も行う状態である。
日本代表のビルドアップと距離感
日本代表のディフェンシブサードからミドルサードでイラン代表がゾーンプレスを仕掛けてきたら、日本代表はフィールドいっぱいに広がるワイドプレイで対抗するべきであって、相手とまともに組み合う必要は無い。
ミドルサードまではワイドにビルドアップが楽になるだろう。
全体をコンパクトにしてアイソレーションを引き立たせる
アタッキングサードではあえて左右に偏ることで、逆サイドにアイソレーションを作り出す。
三笘や堂安が出続けられるかどうかは分からないが、攻撃をポゼッションに切り替えボールを下げ、中央から逆サイドのアイソレーション側にパスを出す。
日本代表の最大の武器である両サイドを活かすのだ。
日本代表の全体の戦術と中央での進化
守備ではラインコントロールとゾーンプレス、攻撃ではワイドプレイとポゼッションを行い、中央からショートパスで逆につなぎ、疑似カウンターを成立させるしか無い。
本来は日本代表が未習得のシステム変更をグループステージで習得した後に目指す攻撃戦術だったのだが、苦肉の策としてイラン戦で成立するかもしない。
日本代表の王道のシステムとシステム予想
同格のイラン代表相手では、日本代表が押し込み続けることは不可能だと判断し、そこでCFは万能タイプで得点能力の高い南野を選ぶ。
今こそ戦術南野を試すときが来たのでは無いだろうか?
戦術南野のゼロトップシステムとは、W杯南アフリカ大会で本田圭佑が4-3-3のCFに入り、一列下がることでCF無しの状態のシステムと同じ。
【参考】「戦術南野のゼロトップシステム」とは
王道のシステム4-3-3
南野
三笘 堂安
守田 久保
遠藤
中山 冨安 板倉 毎熊
GK
正直ベストメンバーを選んだに過ぎず、体力面や怪我の状態を全く考慮していない。
この状態から中2日でどこまで回復して試合に望めるかだが、メンバーを代えた方が無難と言えるだろう。
本来選手層が厚い日本代表なのだが、不運にも右サイドのWG伊東は女性問題、DMの旗手怜央は怪我で代表を抜けた。
★無理矢理ターンオーバーを使った4-3-3★
体力面や怪我を考慮すると、もはや交代戦術の一つ「ターンオーバー」を使うしか選択肢は無い。
【参考】交代戦術のターンオーバーとは
前田
三笘 堂安
守田 久保
谷口
伊藤 冨安 町田 菅原
GK
現在の日本代表では冨安と板倉が揃っていないとラインコントロールが出来ないのだが、全試合出ている気がする板倉を町田、第一試合で不安定だった両SBの伊藤と菅原、ANCが出来るのかすら分からない谷口と不安だらけである。
ただこのシステムであれば、多くのことに対応できる。
4-3-3から5-4-1へシステム変更(推奨)
前田
三笘 堂安
守田 久保
伊藤 菅原
谷口 冨安 町田
GK
押し込まれたり両サイドを使われるようであれば谷口をCB、伊藤と菅原をWBに変更。
最初からこのシステムを基準にしても良いのかもしれない。
3CBで2WBの伊藤と菅原のどちらかが上がっている場合は、もう一方が下がり4バックにシステム変更をするイメージである。
上記で菅原が上がるイメージ
前田
三笘 堂安 ●菅原
守田 久保
伊藤 谷口 冨安 町田
GK
例えば右サイドで菅原がボール●を持って上がる場合、伊藤は上がらずにラインコントロールにより全体を押し上げ4バックになるのだ。
これなら堂安や久保がトップ下に入ることで4-2-3-1へシステム変更しやすく、守備陣系の乱れからカウンターをうける心配も減る。
また三笘が先発できればアイソレーションを行うこともでき、前田の裏抜けやプレスを活かすことも出来る。
5-4-1から5-1-3-1へシステム変更
前田
三笘 堂安
久保
伊藤 守田 菅原
谷口 冨安 町田
GK
更に押し込まれるようであれば守田をANCへ下げ、久保が中央に、全体をコンパクトにする。
カウンターは三笘、前田、堂安らをターゲットとして久保がコントロールし、ボールとは逆サイドの伊藤と菅原が遅れて攻撃参加するイメージのシステムである。
交代戦術で疲労のない選手を出す
大会も終盤に近づき、不慣れなフィールドやボールによる疲労も蓄積した頃だろう。
日本代表にとってイラン代表戦は決勝戦だと認識し、全力を尽くさねば勝てない相手になる。
中盤を空けて前線の選手だけで攻めるカウンターを仕掛けなければ勝てない試合展開になると予想している。
同点や劣勢である場合は交代選手たちが鍵を握ることになり、より一層組織での守備と個人での打開が重要となる。
交代選手が体力を消耗した選手と組織で攻めて噛み合わせるのではなく、個人で打開させる割合を増やすべきだろう。
前田と浅野のハイプレスで後半開始からショートカウンター!?
後半開始や試合終盤、もし前田と浅野がフィールドに並ぶことがあれば、相手をより一層追い込むことが出来るかもしれない。
前半で2点差つけられれば後半頭から、同点や負けていれば後半20分からになるだろうか。
後半開始や試合終盤でも相手を封殺する4-4-2
前田 浅野
三笘 堂安
守田 久保
谷口 冨安 町田 菅原
GK
例えとして左SBの伊藤をCF浅野にすると4-4-2が出来上がる。
前田が先発し、一時的に浅野と並んだ時間帯だけ行っても面白い。
例えば後半開始時にラインコントロールを行い全体が上がり、前田と浅野の二人がプレスを掛け、ショートカウンターを狙う。
先発した前田の体力が尽きそうになる前に交代する戦術である。
押し込めないと予想されるイラン戦であれば、裏へ抜ける浅野のスピードも活かせる様になるだろう。