2007年前後からスペインバルセロナの黄金期が続いていたが、日本人とスペイン人は体格が似ているために見本に出来ると言われ始めた。
すぐに真似するのかと思ったがそうではなく、4-2-3-1や4-3-3のシステムがただ代わり映えなく続けられた。
スペイン代表のティキタカは時代遅れ!?ティキタカってどんな戦術?
ゲーム中のシステム変更(システム変形、可変システム)は常に数的有利を作るためにあり、スペインリーグ「リーガエスパニョーラ」の名門クラブであるバルセロナとレアルマドリードの混成チームであるスペイン代表は、主に4-3-3から3-4-3へのシステム変更を得意としていた。
全体が低い位置では上図左側の様にDF4人が並び、中盤以上の高い位置になると5番がCBに加わり両側のSBが上がることでシステム変更を行う。
ちなみに更に上がる時は3、4番のCBが残り、その他全員が押し上げることになる。
更に加えられたGKからビルドアップのシステム変更
今大会では上記システム変更に加え、GKからのビルドアップでも常に数的有利を作り続けるポゼッションサッカーを目指していた。
中盤から徹底してパスでつなぐ印象があったスペイン代表だが、上図右側のシステム変更を加えたことで最初から最後までパスでつなげることになった。
スペインサッカーの攻撃「ティキタカ」とは
スペイン代表のティキタカとは、ボールをキープすることが多いためポゼッションサッカーと言われるが、ただボールをキープするわけではない。
4-3-3と3-4-3のシステムを基本に全体が一定の距離感を保ち続け、自分のマークを外しながら相手の間に顔を出し、基本的に2~3タッチ以内にパスを出すといったものだ。
再びマークされるとすぐに味方のパスワークの間にミスディレクションを行いマークを外す。
ミスディレクションとは、自分のマークマンが視線を自分から外している間や死角の中で動き直すことで、パスワークが多いと自然とマークも外しやすくなる。
全体で移動することでシステムを大きく崩す必要性も減り、味方を探さなくてもいる位置が分かる様になる。
フリーとなっている味方同士でパスをつなぎ、相手のマークが外れたりポジショニングが乱れたところを仕掛ける戦術だ。
ティキタカのパスワークが多い理由と活用方法
スペイン代表やバルセロナでは一見無駄に見えるほどパスを出し、多いときは同じ人と数回パスを繰り返すことすらある。このパス回しは以下などの目的がある。
- パスを出す時間で足元から目を離して周囲の状況を確認(ルックアップ)する
- マークを外すための視線誘導としてボールを動かす
- 正しいポジションに近い方へわざとパスをずらし味方のポジションを修正する
パスにより味方が情報を収集する時間を作ったり、ポジションがズレていることを伝えているのだ。
スペイン代表は相手に合わせない戦術
そんなスペイン代表は、相手がどのような国であろうと戦術を大きく変えることはなく、強豪国独特の「自分たちを貫くスタイル」である。
前世代に「プジョル、シャビ・エルナンデス、シャビ・アロンソ、イニエスタ、ピケ、カシージャス…」と各ポジションで世界のトップと言われていた選手が揃っていたために変える必要が無かったのかもしれない。
ところがカタールW杯では世代交代に失敗したと言われ、さらに日本戦では監督が本来のポジションとは全く異なる起用をしたため日本が見事勝ちきることができた。
スペインもまた世代交代に失敗していた国だったのだ。
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スペイン代表のティキタカは本当に日本代表の見本になる!?
日本人とスペイン人は体格が似ており、足元の器用さからもスペイン代表のポゼッションサッカーであるティキタカを真似るべきだと言われてきた。
しかし世界でも有数の強豪国であるスペイン代表のティキタカをサッカー後進国の日本が果たして真似できるのだろうか?
スペイン代表と同じ戦術は無理!?日本化が必要な理由とは
日本代表はカタールW杯のグループステージでドイツやスペイン戦で勝利を収めたがサッカーの歴史は浅い。
昭和に「個人技のサッカー」をブラジルから輸入し、平成ではトルシエ監督により戦術と言う言葉が持ち込まれて日韓W杯を乗り越えた。
しかし2005年のオフサイドのルール変更によりシステムや戦術の面で世界から取り残されてガラパゴス化した。
令和になった今でも「組織のサッカー」へ脱却できないレベルなのだが、その原因は各選手のポジショニングにあった。
欧州で通用しても日本代表では通用しないポジショニング
日本代表選手が海外では通用するが、日本代表として世界の強豪国と戦うと勝てない原因は戦術だと言われてきた。
しかしカタールW杯のほぼ全試合と各選手の所属するクラブチームの試合から分析すると、戦術ではなく選手のポジショニングに問題があることが分かった。
日本代表選手のポジショニングに問題があっても、周りがフォローし全体が機能していた。
一つのコマとしては機能する程度のポジショニングレベル
世界では戦術が順調に発達しているため、日本代表選手も『一つのコマ』としては周りにフォローしてもらうことで機能する。
しかし日本人だけになると各選手のポジショニングが噛み合わないため、戦術が機能せず世界の強豪国には勝てないのだ。
現在世界の強豪クラブチームでは、全体でポジショニングの微調整のレベルにまで達しているようだ。
システム変更もポジションチェンジもポジショニング
いくら監督が世界のトレンド戦術や最先端の戦術を組み合わせても、選手のポジショニング能力が低ければ意味を成さない。
日本代表でもシステム変更やポジションチェンジなど、全てにおいてポジショニングの精度が低いため、トレンド戦術を用いても選手が実行できなかったのだ。
日本サッカー界に足りない戦術はポジショニング
カタールW杯で最先端の戦術は、高さでシステム変更をしていた。
- ビルドアップのシステム
- 中盤でのシステム
- 押し込んだときのシステム
その複数のシステムのポジションすらこなすポジショニング能力もないため、高度なポジショニングを要求されるスペインのティキタカは到底真似できないのだ。
ビリーも「具体的な見本があるのなら真似をすれば良い」という意見に反対はないが、勝ちながら理想を追い求めるためには最初から真似ようとするのではなく、日本代表選手の特徴を活かす戦術を取り入れる必要がある。
ティキタカは戦術の一つでしか無い
ティキタカを目指しつつも「俺たちのサッカー」が流行した世代では「無意味にボールをキープすることがサッカーの上手さの象徴」であった。
しかしそもそもティキタカとはカウンターに失敗した後にボールを安全に運ぶ戦術であって、無駄に保持することではない。
さらに現時点で日本代表選手のポジショニング能力は低いためにティキタカは真似できない。
ではどうするのか?
ティキタカを長所を活かす戦術の一部として取り入れれば良いのだ。
【参考】「俺たちのサッカー」が主流の日本代表
「戦術の日本化」の理想はティキタカに日本人らしさを加えることだが、ティキタカをするためのポジショニング能力がない。そのため当面は日本人選手の特徴を活かしながらティキタカを戦術の一部として組み込むことになるだろう。
攻守の目標が明確になり「ベスト8の壁」を破る準備が整った!?
監督の用いる戦術、選手のフィジカルやボールタッチがいくら進化しようともポジショニングが悪ければ何の役にも立たない。
じゃあやはり駄目なのかと言えばそうではない。
「選手のポジショニング能力さえ改善できれば強くなる」のだ。