前回の③でブラジル代表はカテナチオにラインコントロール、ゾーンプレス、そしてハイプレス戦術を組み合わせた「改良型カテナチオ」を採用し、さらにネイマールを投入した。今回は、クロアチア代表の戦術、具体的には「改良型カテナチオ破り」について分析する。
【クロアチア代表の戦術】ブラジル代表を相手にカウンターサッカー
クロアチア代表は特定の戦術スタイルがないと言ったが、彼らは守備では相手の得意なプレースタイルを封じ込み、攻撃ではポゼッションサッカーをベースに自身の強みを発揮する戦術を駆使し、カタールワールドカップで3位に輝いた。
世代交代に失敗したクロアチア代表だが、戦術的にはブラジル代表に引けを取らないことを証明した。
ブラジル代表は組織と個人技を融合させ、一方のクロアチア代表はモドリッチを中心に可変システムを駆使してカウンターサッカーを追求し、PK戦の末に勝利を収めた。
もしクロアチアにディフェンスラインの裏へ飛び出す特別な選手がいたなら、彼らはさらなる成功を収めたかもしれない。
ブラジル代表がトレンドの戦術とされるなら、クロアチア代表は最新の戦術を採用したと言える。
ワイドプレイによるブラジルのカウンターサッカーの阻止
上位の相手に対抗し、互角以上に戦うには、戦術にバリエーションを持たせ、相手の利点を無効化する必要がある。クロアチアは相手の利点であるハイプレス戦術を打破し、モドリッチを起点とするカウンターサッカーを武器とした。
例えば、クロアチアが攻撃する際には、ブラジル代表が得意とする改良型カテナチオ(ハイプレスからのカウンター)に対抗し、選手間の距離を広げるワイドプレイを駆使し、ゾーンプレスを無効化しました。クロアチアはブラジルの得意な守備戦術をさせない選択をしたのだ。
また守備時にクロアチア代表は現代のカテナチオを採用し、ネイマールや他の世界的なスター選手に対して個人でプレーする時間を制限し、ブラジルのディフェンスラインの裏を狙うカウンターサッカーをし続けたのだった。
【参考】改良型カテナチオとは
【参考】女子・アメリカ代表のなでしこ対策の「ワイドプレイ」
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基本のシステム変更と戦術モドリッチは全てがポジションチェンジ
世界の強豪国と同様に、クロアチア代表もトレンド戦術と言われるビルドアップでのシステム変更をいくつも駆使した。
高いポジショニング能力が必要なシステム変更
システム変更とは全員がポジションチェンジを行うことであり、プレイスタイルをそのポジションに合わせて強制的に変更する必要がある。
図.GKからポゼッションを継続するビルドアップ
図.4-3-3から3-2-4-1へのシステム変更と中盤でのビルドアップの例
上図二枚は日本代表の例だが、クロアチアは高さによってシステム変更を正確に繰り返していたのだ。
システム変更は、サッカー選手にとって高度なスキルが求められる要素の一つ。
多くの人は、選手が複数のポジションをこなすと聞くと、OMF(攻撃的ミッドフィールダー)、DMF(守備的ミッドフィールダー)、SB(サイドバック)、CB(センターバック)などのポジションを思い浮かべるでしょう。
しかし、ビルドアップ時などポジションが変わらなくても選手の役割が変化することがあり、これもポジションチェンジと言える。
ワールドカップでの成功にはポリバレントな選手が不可欠
ワールドカップでベスト8以上の成績を収める国の選手たちは、ポリバレントな能力が高く、どのポジションでも最低限の役割ができる。
アルゼンチン代表の「戦術メッシ」やクロアチア代表の「戦術モドリッチ」と呼ばれる選手は特に、どのポジションでも高い精度と技術を発揮する。
戦術モドリッチ: 全員がポジションチェンジ
戦術モドリッチとして知られるシステムでは、ルカ・モドリッチが試合中のあらゆる場面でボールに関与する。これにより、チーム全体がポジションチェンジを頻繁に行うことになる。
クロアチア代表の選手たちは非常に高い精度のポジショニングを維持するため、ポジション変更に違和感を感じさせない。
外国人の顔が全て同じ顔に見えるからクロアチアの選手のポジションチェンジが分からなかったわけではなかったのだ。
システム変更とポジションチェンジ: プレイの精度が不可欠
システム変更やポジションチェンジはポジショニング能力だけでなく、高いプレイの精度も必要とする。
裏への飛び出し、縦への突破、体力と強さだけ…と各ポジションで専門的すぎる選手が多い日本代表に比べ、クロアチア代表は全員が多才で何でもこなせる選手たちが揃っていた。
強さ、正確さ、滑らかなボールタッチ、そして各ポジションの役割の理解が高いことが特徴だった。
世界最先端の戦術は攻防の駆け引きの中に
日本代表がスペイン代表のティキタカを模倣する議論が進む一方で、世界の戦術は着実に進化し続けていた。
ブラジル代表のチッチ監督によって、スペインのティキタカは戦術の一部として採用され、ボールの高さによるシステム変更を行い、数的優位を確保し、ポゼッションを重視した。
ボールの喪失は相手の攻撃機会につながるため、ポゼッションを通じて無駄なシュートやクロスの回数を減らすことを目指した。
しかし安全すぎるアプローチではゴールにつながらず相手の驚異にもならないため、積極的なアプローチも取られている。