W杯カタール大会から交代枠が3人から5人(+脳震盪枠1人)へと増えた。本来は疲労軽減と怪我防止のための交代枠だが、交代できる人数が増えたことでシステムすら大きく変えることが出来るようになった。
また試合が続く大きな大会などで試合ごとに多くのスタメンを代えることをターンオーバーと言う。
森保監督はカタールW杯で5人の交代枠とターンオーバーを組み合わせ、システムと戦術を大きく代える交代戦術を実践したのだった。
※W杯カタール大会からは交代枠の他に交代機会が3回とハーフタイム中と決められており、5人の交代枠を使い切るには一度に複数人を交代する必要がある。
5人の交代枠とターンオーバーを組み合わせた『交代戦術』
カタールW杯で日本はどのチームから見ても格下であった。そのため日本は押し込まれる状況が予想され、カウンター戦術が有効になると予測された。
そこで森保監督は前半のCFW(センターフォワード)に前田大然選手を起用し、前線からプレッシャーを掛け続け、相手のディフェンスラインを混乱させ疲労させる戦術に出たのであった。
後半からスピードスターを投入し「交代戦術」が始まる
前半だけ出る選手は体力を使い切るイメージで、ディフェンスラインの裏をつくことで相手DFを走らせ続けた。
後半からはスタミナを消耗した相手DFに対し、日本代表のスピードスター達が瞬発力の差を活かして得点を狙う戦術である。
図.前半と後半のメンバー交代
後半30分「酒井に代わり南野が入る」前までのシステム。
ドイツ戦後半途中から日本が目指すスタイルになりつつあった。
疲労させた相手にドリブラーたちが仕掛ける
「三笘、浅野、堂安」を投入し、三笘、浅野、伊東らスピードスターたちがそれぞれカウンターやドリブルを仕掛け、相手のディフェンスラインの裏を突き進む形を狙う。
前半前田大然選手が前線から走り回り相手DFを疲労させているため、後半から出た選手はより一層有利になってじた。
カウンターと疑似カウンターでさらに疲労させる
勿論無理ならばボールを戻すことになるのだが、相手のシステムやマークを乱すだけではない。
日本代表のディフェンスラインを押し上げて赤と黄色のバイタルエリアで相手にプレイをさせない守備的な要素も含めた戦術となる。
【参考】カウンターと疑似カウンター
ターンオーバーは試合ごとに選手を代える『交代戦術』
そもそもW杯特有の過密日程が非現実的なのだが、さらにカタールW杯では観客のコロナ対策として長期滞在を少しでも減らすために中3日の強行日程が組まれた。
その中で選手は走行距離を増やすことが求められたのだ。
そのせいかルール変更があり、交代人数が3人から5人へと変更され各国の対応が求められ、結果として選手層の厚さも求められることになったのだ。
選手の疲労を考えると、ターンオーバーをせざるを得ない状況になったのだ。
※ 試合ごとに選手を多く(主に5人以上?)代えることをターンオーバーと言い、過密日程でもパフォーマンスを維持できるようにする交代戦術の一つ。
リンク先の後半で各ポジションごとに選手を紹介しているが、過密日程では選手を試合ごとに入れ替えてフレッシュな状態を維持することが重要となる。
【参考】ジーコジャパンのターンオーバー
疲労が蓄積すると回復力は落ちる
上記図のように、走行距離が伸びれば伸びるほど二次関数的に疲労は蓄積しやすくなる。
疲労が蓄積するほど回復力は落ち、回復までに時間が掛るようになる。
つまり試合中に5人の交代枠をフルに使い、ターンオーバーで試合ごとにスタメンを代えることで疲労の蓄積を防ぐことが理想とされるのだ。
交代枠とターンオーバーを組み合わせた
ここで森保監督は、以下のようにしてW杯特有の過密日程を乗り切った。
- 前半は相手を疲労させるためのハイプレス
- 後半からは交代枠を使ってシステム変更とカウンター
- 試合ごとにターンオーバーでメンバーを代える
更に先手を打つことができれば、相手の交代枠をFWではなくDFや中盤で代えさせ、攻撃的な交代ではなく守備的な交代をさせることも出来るようになるのだ。
交代選手はハイパフォーマンスを維持できる
途中交代であれば瞬発力を維持でき、ハイパフォーマンスのプレイが増えることになる。また本来出ることができなかった選手もハイパフォーマンスをしている間は出れることになる可能性も増える。
交代枠をフルに使いターンオーバーと組み合わたチームとそうでない国とのパフォーマンスの差は歴然となった。