サッカー日本代表は勿論、なでしこジャパンでも「人数をかけて走る、走行距離を伸ばす」戦術を採用している。主に中盤でプレスを掛けるゾーンプレスのためであり、単純に「一人あたり1~2km伸ばせば、10人では10~20km増える」のだが、疲労の蓄積も忘れてはならない。
日本代表の守備戦術は
2005年のオフサイドのルール変更前では、トルシエ監督がはっきりとカテナチオとは言わなかったと思うが、カテナチオにラインコントロールとゾーンプレスを組み合わせて取り入れようとしていた。
ルール改定後に日本代表でもカテナチオを取り入れようとした監督は多く、タケーシ・オカーダから始まり、ザッケローニで継承、イタリア人のハリルホジッチは本当のエリア戦術とも言えるカテナチオに発展させようとした。
特にイタリア人監督のザッケローニ氏が就任時に、エリア戦術とこの守備戦術を取り入れようとしたが、何故か選手たちが拒絶した。
日本代表の消えたラインコントロール
日本ではオフサイドのルール変更後、カタールW杯大会開始までラインコントロールの文化が消えてしまった。
全体でマンツーマンを選択したジーコ監督以来、ディフェンスラインはほぼマンツーマンであるため中盤ではゾーンプレスになり得ず、本当のカテナチオにすらなり得なかった。
現在でも日本のゾーンプレスは根性で走る距離を伸ばす『根性プレス』の要素が強い。
ラインコントロールの無いゾーンプレス
サッカー日本代表が選択した戦術は、ラインコントロールの無い状態でゾーンプレスを掛ける「根性プレス」である。
よくサッカーではマークを外すため、スペースを広くするため、相手のディフェンスラインを下げるためなどの走りを「無駄走り」と表現するが、ラインコントロールが無いと全体が間延びしやすく中盤でも走る距離が自然と伸びて、本当の無駄走りになってしまうのだ。
戦術『根性プレス』と大会の相性
走る距離が増えれば疲労の蓄積も1試合ごとに増える。
Xを走行距離、Yを疲労、kを個人差とすると、
走行距離と疲労の関係は
正比例「Y=kX」よりも、
Xの二乗「Y=kX^2」に近い。
長い距離を走ることで最初に影響を受けるのは瞬発力だろう。
スピードが出ないと更に走行距離が必要になり、悪循環で本来の戦術も機能しなくなるのだ。
走行距離と回復力の関係
走行距離を伸ばすと回復が遅くなる。
「代表クラスは回復力も尋常じゃない」と言っても、相手の選手も同じである。
W杯やオリンピックなどの大会では試合間隔が短いため、フル出場すると全快することが無く、疲労は溜まる。
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戦術で走行距離を効率化する
そもそもサッカーの戦術は攻守において「ボールを奪いやすく、ゴールを狙いやすく」など効率を改善するものである。
全体でコンパクトに動いたりボールとは逆サイドだけ離れるなどの戦術を活用することで、「本当の無駄走り」を減らすことはできるのだ。
交代枠も戦術として活用する時代
2022年のW杯カタール大会以降、一試合での交代枠が3から5(+脳震盪枠1)に増えた。交代枠が増えたことで、交代枠すら戦術の一部となってきた。
例えば、前半はショートプレスを掛けてカウンターを狙い、消耗した選手を後半から交代させてはポゼッションにするなど、戦術を変える大きな要因となっているのだ。
W杯の日本代表で言えば、前半のショートプレス役として前田大然選手を起用し、後半からは相手に合ったFWを投入。 またサイドでは後半から三笘薫選手を投入することで消耗した相手に対して瞬発力で仕掛ける**交代戦術**を活用した。