イングランドプレミアムリーグのスター選手たちが揃うイングランドに対し、超守備的布陣を作るイランがどこまで耐えることができるか注目されていた。
イングランドは世界ランキング5位、7大会連続16回目。
前評判で優勝候補であり、選手層もかなり厚かった。
弱点となるポジションもなければ、中盤でコントロールする選手もオールラウンダーで安定感も抜群らしい。
イランは世界ランキング20位、3大会連続6回目。
対するイランは予選で見せた堅実な守備と、最小失点に抑えてカウンター攻撃を中心に仕掛けるだろうとの予想だった。
前半 前評判以上のイングランド
まず見た目の体格に大きな差は見られなかったのだが、開始早々イランの選手とGKの味方同士が強く接触し、結果としてGKが交代となってしまった。
今大会では交代枠が5人(ハーフタイム以外での交代機会は3回)と、交代の回数に含まれない脳震盪(のうしんとう)による交代枠が1人認められているのだが、イランは試合開始早々でGKの交代でリズムが乱れたのかもしれない。
イランの監督も分かりやすいほど頭を抱えていた。
イランは実力以上の戦いを見せたのだが…
イランはイングランドの圧倒的な上手さに前半30分までは耐えて居たのだが、ただの一度だけ守備がほころびたところをスルーパスにより通され、簡単に決められてしまった。
恐らくはそこで集中力が途切れてしまったのかもしれない。
時間が経つにつれ、体の強さよりもボールコントロールの技術に圧倒されだしたのだった。
個人技と組織を融合させた「データ戦術」
現代サッカーはアメフトのデータ解析を元に、データ戦術と言われている。
サッカーでデータ解析を最初に取り入れたのはドイツであり、データ戦術で最も有名な試合が「ドイツがブラジルを7対1で圧倒した試合(2014年7月8日)」だろう。
イングランドは、その試合のデータ戦術を基本としている。
イングランドの守備戦術
- まず4-4-1-1の形を作り、ボールに対して近くの味方がゾーンプレスを掛ける。 ※この試合では実力差が大きくあるため、高めのラインコントロールはしていない。
- イランが苦し紛れのパスやドリブルをするとボールがこぼれ落ちてくるので、それをカットしてカウンターを仕掛ける。
- カウンターが駄目なら一度下げて攻撃の組み立てをし直す。
- ディフェンスラインから攻撃をする時は、最小の手数でゴールを目指し速攻を仕掛ける。
これの繰り返しである。
イングランドのオフェンス戦術
- 基本的に長いパスを減らし、近い味方から浮かせないパスでつなげる。 強引なパスも減らし、一旦ボールをDFに戻すことでボールロストを減らす。
- ボールロスト(相手にボールを奪われる機会)を減らせば相手の攻撃機会も減る。
- 強引なミドルシュートも打たずにDFに戻す。
かつては「DFラインが打開できなければミドルシュートで攻撃のリズムを作る」が常識だったが、現在は「相手に攻撃の機会を渡す」ことで『相手の攻撃リズムを作る機会』と考えている。
一定の距離を保つ組織戦術
ボールを扱う個人技よりも大きく異る戦術が見えた。
イングランドは、サイドに広がる選手以外、一定の距離を保っていた。
- 縦にも横にも一定の距離を保ち、必ず相手マークの間に顔を出すことで味方を探す時間が短縮される。
- するとパスの強弱も不要となり、ミスが減る。
- パスが連続でつながるとボールのポゼッションが高まる。
これがアメフトから発達したデータ解析を活かした現代サッカーだ。
後半 イランのリズムは戻らなかった
前半1失点から直ぐに2失点目をしたところで試合は決まったと言える。
イランの選手は苛立ちを隠せず、ラフプレーが増えてきたようにも見えた。
格下であるイランはカウンター戦術しかないため、勝利をするためには先制と堅守が絶対であった。
ところが試合開始早々にGKが交代し、先制もされてしまった。
そこまでは最悪のプランの一つだったかもしれないが、すぐに2失点目をしてしまった。
ここで気持ちも切れ、残りはイングランドの練習と調整になってしまった。
試合結果は想像以上に
最終的なスコアは6-2でイングランドの勝利。
恐らくイングランドは決勝トーナメントにも出場が濃厚となり、他のチームより体力も温存できているだろう。
交代枠も5人となったことでプレミアムリーグのスター選手たちを擁するイングランドは優勝の最有力候補となったのかもしれない。