
これまで欧州の戦術分析から、日本代表が目指すべき戦術を考えてきました。 しかし、北中米ワールドカップが近づく中で、限られた時間しか集まれない日本代表にとって、理想論だけを追い続けることは現実的ではありません。
そこでこの記事では、現在の日本代表が実践できる現実的な戦術を考えていきます。 ポイントになるのは、ビルドアップ、味方プレス、距離間、3-4-2-1、そして左右非対称のサイド攻撃です。
- 無理なGKからのビルドアップにこだわりすぎない。
- 味方のプレイエリアに入らない距離間を最優先する。
- 3-4-2-1で最低限のポジションチェンジに絞る。
- サイドの1対1と疑似カウンターを攻撃の中心にする。
- 左右非対称の形で、攻撃と守備のバランスを取る。
この記事は、日本代表や森保ジャパンの戦術を批判するためだけの記事ではありません。 むしろ、今の日本代表ができることを整理し、北中米ワールドカップで勝ち上がるための現実的な戦い方を考える記事です。
- 日本代表が目指すべき戦術は理想論ではなく現実論
- 日本代表の課題はポジショニングと距離間にある
- 森保ジャパンが勝ち上がるために必要な割り切り
- 3-4-2-1で最低限のポジションチェンジを使う
- 左右非対称の戦術で守備と攻撃のバランスを取る
- まとめ:日本代表はできる戦術に割り切れるか
日本代表が目指すべき戦術は理想論ではなく現実論
「日本人は世界と比べて圧倒的に器用」と言われていたため、「ポジショニングも器用にこなせる」と思い込んでいました。 ところが、カタールワールドカップ以降の日本代表を見ていると、思ったほど戦術面で大きく進化したようには見えません。
もちろん、日本代表には欧州クラブで活躍する選手が増えました。 個人能力の高い選手も多くなり、アジアの中では高いレベルにあることは間違いありません。
しかし、代表チームはクラブチームほど長い時間をかけて戦術を作り込めません。 そのため、難しい理想戦術を追い続けるよりも、今できる戦術に割り切ることが必要になります。
これまでの理想的な戦術については、以下のリンク先で紹介しています。
▶ 日本代表が行うべき理想の戦術とは
日本代表の課題はポジショニングと距離間にある
日本代表でもJリーグでも、ポジションチェンジやシステム変更という言葉はよく出てきます。 しかし実際の試合では、選手がボールに集まりすぎることで、本来のシステム変更が意味をなさなくなる場面があります。
現在の日本代表には、ボールに集まりすぎる場面や、動き直しが足りない場面が残っているように見えます。 これは個人能力の問題だけではなく、ポジショニングと距離間の問題でもあります。
ポジショニングは、ボールを持っていない時のプレーです。 ボールを持っていない選手がどこに立つかによって、ボール保持者の選択肢は大きく変わります。
味方プレスとは?味方のプレイエリアを消す問題
味方プレスとは、ボールホルダーに味方が近づきすぎることで、味方のマークマンまで一緒に連れてきてしまい、ボール保持者のプレイエリアを狭くする状態のこと。
- 味方がボールへ近寄る。
- その味方のマークマンも近づく。
- ボール保持者のプレイエリアが狭くなる。
- パスコース、ドリブルコースが無くなる。
- 結果、味方が味方にプレスをかけたような状態になる。
ビリーはこれを味方プレスと呼んでいます。
味方プレスは、イニエスタ選手に憧れた選手に顕著に見られる傾向があります。
イニエスタ選手には、どんなに囲まれても突破するドリブルがありました。
しかし、日本人選手が同じ形を再現するのは簡単ではありません。
日本代表でビルドアップ中に味方プレスを掛けている中心選手がいることを、ビリー以外で指摘する人が少ないことに驚きを隠せません。
距離間が崩れるとビルドアップもシステム変更も崩れる
距離間を維持したまま、ボールを持たない選手が動くことでシステム変更は成り立ちます。
しかし、ボールに寄りながら動いても、本来いるべき位置からは遠くなります。
その結果、システム変更をしたつもりで、味方プレスをし続けることになります。
味方が近づきすぎると、ビルドアップも詰まりやすくなります。
広がるべき場面で広がれなければ、ワイドプレイも実現が難しくなります。
▶ GKからのビルドアップとは
ワイドプレイは、ただ横に広がるだけでは成立しません。
ボールを持つ選手、幅を取る選手、内側で受ける選手、失った時に備える選手の距離間が整理されていて初めて機能します。
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森保ジャパンが勝ち上がるために必要な割り切り
カタールワールドカップが終わってから時間は経ちましたが、日本代表の戦術が大きく進化したようには見えません。 北中米ワールドカップまでの時間を考えると、ここからはできない戦術を追い続けるよりも、できる戦術へ割り切る必要があります。
ここからは、できない戦術を捨て、割り切ってできる戦術だけを考えます。
- 無理なGKからのビルドアップにこだわらない。
- ワイドプレイの理想形を無理に追いすぎない。
- 味方のプレイエリアに入らないことを最優先する。
- 3-4-2-1の中で、最低限のポジションチェンジに絞る。
- できる戦術を前提に、カウンターや速攻を活かす。
GKからのビルドアップにこだわりすぎない
ビリーには、ビルドアップのできない選手を中心に起用し、出し続ける理由が分かりません。 もしビルドアップが安定しない選手を起用するなら、GKから細かくつなぐ形は諦めて、従来のように大きく蹴り上げる選択肢も必要になるでしょう。
無理やりつなぐ必要もなければ、カウンターや速攻を狙う日本代表にとっては、結果的に良い方向へ進むかもしれません。
カタールワールドカップで見せたハイプレスとショートカウンターを、意図的に作ったような形になる可能性もあるからです。
集まるなら最初から集まる戦術を設計する
日本代表には、三笘、久保、伊東など、ドリブルでの仕掛けが得意な選手が多くいます。 ワイドプレイとまではいかなくても、1対1の状況を作るべき選手はいるはずです。
ところが代表戦になると、味方が彼らのプレイエリアに入っていき、味方プレスを掛けてドリブルができない状況を作ってしまう場面があります。
そんな状況を作るぐらいなら、最初から「集まりやすい」ことを想定した戦術にした方が現実的です。
3-4-2-1で最低限のポジションチェンジを使う
例えば、以下のような3-4-2-1があったとします。
※メンバーは暫定です。
3-4-2-1の基本イメージ
上田
伊東 久保
中村 菅原
鎌田 遠藤
瀬古 高井 関根
この図で見たいポイント
- 2シャドーが左右に分かれ、ボールサイドでWG化する。
- 逆サイドのシャドーは中央寄りに残り、バランスを取る。
- WBは大外を取りすぎず、必要最低限の連携に絞る。
- 全員がボールに寄りすぎないことが重要になる。
もしボールが右サイドへ行った場合、久保は右シャドーから右WGへ移動し、伊東は左シャドーから中央寄りに残ります。
中村は左サイドで幅と攻守バランスを保ち、ボールが逆へ流れた時の出口になります。
ボールが左サイドの場合は、伊東が左WG化し、久保が中央寄りに残る形を想定します。
右サイドにボールがある時の変化
上田 久保⚽️
伊東
中村 鎌田 遠藤 菅原
瀬古 高井 関根
この図で見たいポイント
- 久保が右サイドで1対1を狙う。
- 伊東は中央寄りに残り、ボールが逆へ流れた時の受け手になる。
- 中村は逆サイドで攻守のリスク管理と疑似カウンターの準備をする。
- 中盤と最終ラインは、味方のプレイエリアに入りすぎない距離を保つ。
現実的なシステム案
現実的なシステム案
上田
中村 久保
鎌田 佐野
遠藤
町田 瀬古 高井 関根
2シャドーをWG化・CMF化してサイドを活かす
久保が1対1を仕掛けられるように、中村や田中、菅原がパスをつなぎ、状況によっては菅原が追い越す準備をしておきます。
中央の中村と上田は、久保がセンタリングを上げた時に備えて構えておきます。
このように、2シャドーがWGとCMF化し、ごく簡単なポジションチェンジをします。
3-4-2-1の真の狙いは、この最小限のシステム変更で、1対1が得意な選手を活かす超攻撃的な形になれることです。
最低限の距離間を保ち、味方のプレイエリアに入らない
ポジショニングが厳密に必要とされるワイドプレイやシステム変更は、現時点では難しいかもしれません。
そこで、両サイドのWGが1対1、もしくはSBやWBと必要最低限の連携を行うだけの距離間を保つようにします。
全体の距離間を完全に揃えるのではなく、部分的に距離を取る考え方です。
最低限、味方のプレイエリアに入らないように注意すること。 これだけでも、サイドアタッカーが1対1を仕掛けるスペースを残しやすくなります。
逆サイドは疑似カウンターとリスク管理を担当する
右サイドで久保が仕掛ける場合、逆サイドの中村は、リスク管理としてセンタリングのボールがこぼれてきた時、また疑似カウンターによるサイドチェンジの時に上がるようにします。
ただし、伊東が中央寄りに残る場合は、伊東が逆サイド展開の受け手になることも考えられます。 大切なのは、逆サイドの選手が最初からボールへ近づきすぎず、サイドチェンジの出口を残しておくことです。
▶ 両サイドのスペースを攻める「疑似カウンター」とは
左右非対称の戦術で守備と攻撃のバランスを取る
上図では、左が伊東(FW、WG、SH)で、右が菅原(WB、SB)です。
そのため、左右同じような戦術を行うことはできません。
これは4-4-2の守備陣形を作る時に、最後列でDFが4人並ぶことで、守備とラインコントロールの安定感が増すためです。
例えば右サイドにボールがあって守備をしたとします。
守備時の4-4-2イメージ
上田 伊東⚽️
中村 守田 田中 久保
伊藤 冨安 板倉 菅原
対戦チームのサイドアタッカーに合わせて、SBを起用する方針になります。 両サイドが脅威となる場合は、両サイドともSBになることもあるでしょう。
- 片方のサイドを攻撃的に使い、もう片方で守備バランスを取る。
- 相手の強いサイドに合わせてSBを起用する。
- 守備時は4-4-2に近い形へ戻し、ラインコントロールを安定させる。
- 両サイドが脅威となる場合は、両サイドともSBを使う選択肢もある。
こうしたシステム変更や距離間を理解するには、実際に選手の配置を動かしながら考えると分かりやすくなります。
戦術ボードや関連書籍を使うと、ポジションチェンジやサイド攻撃のイメージもしやすくなります。
まとめ:日本代表はできる戦術に割り切れるか
戦術にも選手にも相性があるため、最終的にはチームの成熟度や運が試合を決めることになります。
ただし、北中米ワールドカップで勝ち上がるためには、理想論だけではなく、今できる戦術に割り切ることも必要です。
日本代表には、サイドで仕掛けられる選手、前線から守備ができる選手、カウンターで走れる選手がいます。 その特徴を活かすなら、3-4-2-1をベースにしながら、最低限のポジションチェンジと距離間の整理を徹底する形が現実的です。
日本代表が勝ち上がるためには、難しい理想戦術を無理に完成させるよりも、味方のプレイエリアに入らない、サイドの1対1を活かす、逆サイドで疑似カウンターを狙うといった、できる戦術を徹底することが重要になるでしょう。
器用だと思い込んでいた日本人ですが、器用なのはボールを扱う技術だけで、オフザボールやポジショニングなどの技術はまだ発展途上なのかもしれません。 日本代表の選手たちは世界で活躍するものの、日本代表では選手の能力を出し切れない状況が続いています。