2024年のEUROとコパ・アメリカの試合を比較することで、欧州と南米それぞれのサッカー戦術の特徴が浮かび上がる。本記事では、両大陸の戦術スタイルの違い、日本代表が取るべき戦術的選択肢について考察する。ポゼッション重視の欧州、速攻とドリブルを活かす南米、そしてその狭間にある日本代表の戦い方に焦点を当てる。
欧州の特徴と南米の特徴で変わる戦術
欧州ではEURO(欧州選手権)、南米ではコパ・アメリカ(南米選手権)が開催される。2024年のEUROの試合を可能な限り視聴できたが、コパ・アメリカを観る余裕はほとんどなかった。世界では「戦術的なEURO」に対し、「殴り合いのコパ・アメリカ」と例えられており、数試合ですが分析をしてみた。
▶EURO2024の試合分析
欧州はポゼッション、南米は速攻重視の戦術
コパ・アメリカの戦術を先入観から「殴り合い」として見ていたが、見るとすぐに印象が変わった。南米には欧州を経験した監督やコーチが多く、すでに最先端の戦術が取り入れられていた。
欧州以上に足技や瞬発力を含めたフィジカル能力に優れる選手が多いため、縦への意識が強く、戦術が無いように見えることもあるが、実際にはカウンターや速攻を重視する現代的なスタイルが確立されていた。
シュートチャンスと判断した場合、パスではなくドリブルを選択する傾向があり、ポジションチェンジやシステム変更も多く見られ、戦術的な多様性はむしろ進化していた印象だ。
1対1の強さが際立つ南米サッカーにおいては、フィールドを広く使ったワイドプレイが非常に効果的だと感じた。
北中米W杯で勝ち上がる南米のチームは、部分的にでもワイドプレイを取り入れるだろう。
▶フィールドを幅広く使うワイドプレイとは
南米はポジションも攻守の入れ替わりも激しい
速攻に合わせて頻繁にポジションチェンジやシステム変更が行われるため、観戦者には「殴り合い」に見えたのかもしれない。
オフザボール(ボールを持たない時の動き)も激しく体力の消耗が激しいため、試合終盤になると選手の動きに明らかな差が出ることも、「殴り合い」と表現される要因だろう。
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日本代表と欧州、南米との相性
2025年3月まで、森保ジャパンの戦術は連携した守備からのカウンターや速攻が基本だ。欧州相手にはある程度機能するこのスタイルも、南米相手には通用しにくい印象がある。
欧州のようにポゼッション志向のチームに対してはボールを奪うチャンスも多いが、南米のように日本代表以上に速攻やドリブルを多用する相手には1対1の局面で劣勢に立たされるケースが目立つ。
組織的な守備を築く前に突破され、圧倒的な決定力で得点されてしまう場面も多く見られる。
日本代表は欧州でも南米でもない中間を選択する
日本代表は欧州型でも南米型でもない独自の戦術スタイルを模索すべきだ、との結論に至った。距離間の維持やポジショニングの文化が不足しており、システム変更にも対応しにくい状況では、トレンド戦術の習得は現実的ではない。
割り切って戦術を捨てる
出来ないことを無理に取り入れるのではなく、「やらない戦術」という選択肢があっても良いのではないか。
例えば、ビルドアップ時にボールのロストが多いならば、そもそもビルドアップにこだわらない戦術を構築する。
距離間の保持が難しいなら、あえて距離間を崩すスタイルに最適化されたシステム(フォーメーション)を探る。
一見すると無謀にも見えるかもしれないが、日本サッカー界のレベルを見れば、欧州や南米の最先端戦術をW杯までに完全に再現することは困難だろう。
割り切って前向きに考える
日本代表は欧州にも南米にもなりきれないが、その“中間”という立ち位置を前向きに捉えることで、苦手とする南米との相性を改善できるかもしれない。
このテーマについては、今後のシリーズ記事でも詳しく考察していきたいと思います。
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欧州と南米の戦術スタイルの違いを理解することは、日本代表の課題と可能性を探る上で極めて重要だ。欧州型のポゼッション、南米型の速攻、そしてそれに対抗するには独自の戦術設計が必要になる。出来ないことを無理に取り入れず、現実を踏まえて「できる戦術」に集中する。その割り切りこそが、未来の日本代表の鍵になるかもしれない。