サッカー日本代表のインドネシア戦では、オランダからの帰化選手が多く、敵地(アウェイ)での試合ということもあって試合展開が見えなかった。結果として大勝した日本代表だが、この記事では勝利の裏に隠された課題に迫る。
※『3つの課題』は赤字で書いてみました。お暇な人は3つを考えながら読み進めてみて下さい。
【参考】
・インドネシアの分析
・インドネシア戦の予想
・DAZNの無料配信『日本vsインドネシア』戦
・ビリーの同時視聴(段々と罵声を言い出して…)
インドネシア戦で大勝した日本代表の戦術的課題を深掘り!
CFWの上田綺世、左SBの伊藤、CBの冨安、谷口…と怪我人が多く不安視されていたアウェイ戦だったが、序盤ではインドネシアの様子見、仲間との連携の確認から始まり、試合中に調整を重ねているように見えた。
結果は0-4で日本代表が勝利を収め、点差だけを見れば圧倒した様にも見える。
しかし、日本代表は意図する戦術を行い、試合を重ねるごとに成長をしているのだろうか?
日本代表のスタメン 3-4-3(2シャドー型)
小川
鎌田 南野
三笘 堂安
守田 遠藤
町田 板倉 橋岡
どこでも絶賛される日本代表
各ニュースやYoutubeを始め、SNSでは絶賛され続ける森保監督の日本代表。
スポーツ界では調子が良い時は絶賛され、少しでも不調が見えると「怠慢だ」などと冷やかされ、負けた途端に「監督を更迭しろ」と煽られる。
そもそも勝負の世界で勝ち続けられるわけがないのだが、良い時も悪い時も、誰も改善点や問題点を指摘しないことに問題があると思う。
そこで今回はインドネシア戦で見て取れる日本代表の問題点を挙げる。
本当に日本代表の層は厚いのか?
「層が厚い」と言われていた最近の日本代表だが、伊藤がいるにも関わらずカタールW杯でバックパスを連発したことで左SBが居ないと言われていた。
その伊藤が怪我をしたことで4バックができなくなるが、幸いCBは冨安、板倉、谷口、町田、橋岡、瀬古…と揃っていたため3バックになった。
W杯の様に連戦ではないためCBの層が厚い日本代表にどハマリし、WBにWGやSHを本職にする選手を入れたことで、より攻撃的な3-4-3ができ、攻めきることで相手を圧倒する結果となった。
冨安が怪我をし、4バック時にはスタメンにならない谷口が3バックとして穴を埋めてきた。インドネシア戦直前でその谷口までもがアキレス腱を断裂し、離脱したことで板倉、町田、橋岡が先発することになった。
主力CB2人の離脱で消えたラインコントロール
日本代表のディフェンスラインでラインコントロールが出来るのは、冨安、板倉、谷口なのだが、板倉だけが残った。
インドネシア戦で板倉は残っていたもののラインコントロールが消え、ディフェンスラインが下がることで全体が間延びした。
勿論インドネシアも日本代表のゾーンプレスを避けるべく、ワイドプレイほどではないにしても広がっていたのだが、縦にも横にも広がってしまったことでゾーンプレスも消えた。
控えのCBやSBたちは、ラインコントロールが出来ない選手ばかりだった…
※ラインコントロールとゾーンプレスは合わせて一つで!
インドネシアの戦術の意図とは
韓国人のシン・テヨン監督が目指す戦術は、恐らく欧州が全体的に目指す「堅守速攻と無駄な攻めを削りポゼッションを高めるスタイル」と同じ。
グアルディオラ監督の優位(有利)性で言えば、日本代表が味方同士の距離間が近すぎた状況に対し、インドネシアは程よい距離間を保ち、位置的有利を作れていた。
日本が勝てた理由は、選手たちの質的有利が圧倒していたからと感じた。
課題と言われたビルドアップの現状と試合展開
試合前の選手たちの声では、大雨によりボールが引っかかる、芝が重いなどの声が上がっていたそうだ。そのため距離を広げられなかったのかもしれない。
- 全員
システム変更をしながらポジションを入れ替わりつつ、距離間を維持できないため味方同士が重なったり、ゾーンプレスを掛けられやすくなる。
また世界でも常識となっているGKからのビルドアップのシステム変更が出来ていない。 - ディフェンスライン
3CBが近すぎるため左右にボールが展開できない。これはもしかしたら大雨のせいだったのかもしれない。
ラインコントロールが出来ないため、全体が間延びして距離間を維持できない。 - 全体の距離間
味方同士の距離間が近くなるとドリブラーのプレイエリアが無くなる。現在の日本代表のレベルだと、ワイドプレイまでいかなくても広がってプレイできるはず。 - 遠藤選手
ボールへ近寄るポジショニングのせいで味方の壁となり、中央でのビルドアップが機能しない。 - 三笘選手
前に仕掛けるドリブルの能力は世界でも随一だが、ボールのキープ能力が低い。インドネシア戦でも相手選手へボールを渡すことが多かった。
上記以外にも挙げればきりがない程指摘できるのだが、日本代表がこれからW杯ベスト8の壁を打ち破るためには、全体で戦術的な動きを習得しないとだろう。
鎌田選手が単独で偽SBを!?
左WB三笘のビルドアップやボールのキープが必要となった時、とっさにボールを蹴る癖があるのだが、対戦相手の選手にボールを渡すことが多い。
そのため三笘選手に低い位置でボールを渡すと不用意なボールのロストが増え、カウンターを受けることが多くなる。
そこで鎌田が独断なのか分からないが、左WBの位置に入ることで三笘を押し上げたシステムを一時的に作っていた。
小川
三笘 南野 .
↑↗ 堂安
鎌田 守田 遠藤 .
町田 板倉 橋岡
※矢印は鎌田の動き。
試合中のビルドアップの中で何度も左WBの位置に入るシーンがあったのだが、記事冒頭の試合動画の2点目を決めるシーン(2:11:13)からが分かりやすいだろうか。
恐らく鎌田は三笘や遠藤のビルドアップの悪さを理解し、またCM(トップ下)に王道の南野がいるため、こういったポジショニングをしたのだろう。
鎌田のように単独で偽SBの戦術を行ったことがこの試合で一番の驚きだった。
日本代表はこの様な動きを全体で連携して意図して行うことが目標だ。
ちなみに1:51:00で、三笘は守田が外に流れてきた時点で1レーン内側にいるべきだった。
その他の偽SBっぽいシーン(鎌田 1:51:28、三笘 1:53:47、堂安 1:55:25、鎌田 2:02:50など)
【参考】グアルディオラ監督が考案した偽SBとは!?
サイドに流れることが出来ない南野
以前南野を左サイドとして起用したが、サイドの動きができない南野が今日も出てしまった。見ている人には堂安が悪く見えたかもしれないが、そうではない。
上記の図ではボールが左サイドに流れると鎌田が偽SBの位置に流れていたが、その時は南野が中央で張っていた。
逆に右サイドにボールが出た時は、南野が流れて中央で鎌田(や守田)が張って待つ状態を作らなければならなかった。
しかし南野がサイドの動きが出来ないために堂安が孤立した状態が続いてしまった。
2:01:47からのプレイでは、堂安が南野に対して開いてくれと要求をするシーンも見られたのだが、ここまで開けない選手も珍しい。
3-4-3のWGのシステムとは異なり、3-4-2-1(今日のスタメンのシステム)では、最初から両サイドのFWが開いているわけではない。
そのため、ボールサイドのシャドーの一人が開くことになるのだが、南野はそれが出来なかった。
孤立するWB堂安
堂安がスタメンになると必ず非難されているが、堂安が悪い動きをしているわけではない。前戦ではビルドアップ時の遠藤のポジショニングが悪いために久保が下がりボールを引き出し、空いたポジションへ堂安が上がり孤立した。
今回は遠藤に加えて南野が開かないためにまた孤立。
小川
三笘 南野 堂安
鎌田 .
守田 遠藤
町田 板倉 橋岡
とばっちりで不遇を受ける堂安が報われる日は来るのだろうか。
日本代表の目標は選手の戦術理解
聞いた話で恐縮だが、日本代表は欧州組が試合直前まで集まれないことが多く、宮本恒靖会長がスポンサーとなっている全日空空輸株式会社(ANA)に頼んでチャーター機を出してもらうまでは現地集合の選手も多かったと聞く。
【参考】つね様の振り向きざま笑顔
勿論現在でも直前集合の選手は多いと思うが、戦術の浸透は遥かに良くなったと(他紙から)聞く。
森保監督の戦術を浸透させるには
故オシム監督や「俺達のサッカー」を経て、スペイン代表の模倣を目指すがどれも中途半端だった。そろそろ日本代表が目指す戦術を固定し、資料でも作って招集する選手たちに配布してみてはいかがだろうか。
一般的に戦術の意図とは「自分たちの良さを全面的に出し、悪い部分を隠す。相手の良い部分を出させず、悪い部分を攻める。」なので、相手によってある程度変更する部分は出てくる。
相手によって変更する部分だけ集合してから伝えればよいだけの状態は作れないのだろうか。
それにはまずスペイン代表の様に、相手によって変えない根底の部分を決める必要があるだろう。
【参考】森保ジャパンの基礎戦術を考える
この手の文章を延々と書き続けてきたのだが、選手のレベルが上がり続けているにも関わらず、カタールW杯からアジア杯、その後戦術の進歩は全く無いと言える。
選手の実力に戦術が追いついていないとは、なんともさみしいものだ。
今後森保ジャパンの基礎戦術は、上記リンク先で更新したいと思う。