岡田監督の就任から目標どおり、ボール保持率(ポゼッション)着実に上がっていた。しかし思うような結果にはつながらなかったのだ。
ここで『岡田監督のポゼッションサッカー』を分析してみよう。
サッカーの戦術は点を取るためにある
サッカーの目的は点を取ることで、点を取るには「相手の陣形が整う前に攻める」か、「整った陣形を崩す」必要がある。
前者はカウンターや速攻を指し、後者を実践するために岡田監督が選んだ戦術が「ポゼッションサッカー」になるはずだった。
カウンターとは「ボールを奪ってから相手のディフェンスが整う前に攻撃すること」、速攻とは「タッチ数を最小限に減らし、シュートまで行くこと」である。
岡田監督の戦術「ポゼッションサッカー」の特徴
岡田監督は「(日本人から見た)日本人らしいポゼッションサッカー」を目指した結果、ボールの保持率以外で幾つもの特徴が出た。
- オシム前監督から継承するはずだったボールを奪取してからのカウンターや速攻が消えた。
- ボールを最後尾で回しすぎて、攻める時は相手の守備は準備万端。
- 前線でポストプレイをしても、パスは攻めるためではなく保持するため。
- ペナルティエリアにいるFWたちもシュートではなくパス回しに専念。
「カウンターや速攻」が無くなった結果
日本代表のカウンターや速攻の優先順位は低く、ディフェンスラインでのパス回しが基本である。そのため相手は、日本代表にボールを奪われようとも万が一のカウンターさえ潰せばディフェンスラインでパス回しを始めてくれるので、カテナチオと呼ばれる4411のディフェンスシステムを作る時間が稼げていたのだ。
そのため日本代表に対して中盤からプレスを掛けて危険を犯す必要が無いのだ。
「整った陣形を崩す戦術」がポゼッションサッカーのハズだった
ポゼッションサッカーは、中盤や前線で整った陣形を崩してシュートを打つはずだった。
しかし実際は最後尾のディフェンスラインでボールを回し続けることが多く、例え前線の選手にボールが渡っても守備よりキープを選択するのだった…
岡田監督のポゼッションサッカーは、相手の脅威には全くなり得ない戦術に思えた。
この原因はどこにあったのだろうか
上記1~4の原因は前回話した「戦術的要素が足りないから」であり、日本人の特徴である「器用さと俊敏性、そして弱冠優位に立てる持久力を活かしたポゼッションサッカー」を意識しすぎた結果である。
ボールを保持する意識が高くても、仕掛けるタイミングを合わせてシュートまで攻めきることすらできなかったのだ。
ボールの保持率が上がった理由は相手の戦略だった
相手はカテナチオが出来た段階でディフェンスラインをゆっくり引くと日本代表全体のポジションは高くなるが、相対的にボールの位置は低い。
日本代表ディフェンスラインの裏は広大なスペースが空くためショートカウンターやカウンターが成立しやすくなる。
当然ながらこの現象は相手が強ければ強いほど顕著に現れ、俗に言う「ボール回しをさせられた結果」、ボールの保持率が上昇しただけだったのだ。
結局悪い意味での日本人らしさが出た
独断と偏見なのだが「日本人から見た日本人らしさ」とは、「協調性ではなく、周りに流されるだけ、または他人任せ。はっきりした決断が出せず、優柔不断で決断が遅い」ことを表現した戦術に見えた。
岡田監督の掲げたスローガンの「接近・展開・連続・(根性)」は、結果としてカウンターや速攻を無くし、試合中にキープゲームをすることになっていた。