サッカーの試合は、常に流動的な状況下で行われる。勝利を掴むためには、状況に応じて柔軟に戦術を変化させることが不可欠。その中でも数的優位を築く戦術は、攻撃の活性化や守備の安定化に繋がり、試合の流れを大きく変える可能性を秘める。本記事では、数的優位を生み出すシステム変更について、具体的な例を交えながら詳しく解説する。
数的有利を作るシステム変更とその目的とは
数的有利とは、あるエリアにおいて自チームの選手数が相手チームよりも多い状態を指す。
システム変更は、数的有利を作り出す最も効果的な手段の一つ。試合の状況に合わせて選手の配置を変化させることで、特定のエリアに数的有利を作り出すことができる。
数的有利を作るシステム変更の最大のメリットとは
攻撃時に数的有利な状況では、味方一人以上がフリーな状態になる。
常にフリーな味方へパスを出し続けることができれば、相手のマークを混乱させることでディフェンスラインに穴を作ることができる。
またボールへチェイスさせ続けさせることで、相手が本来攻撃時に使用したい体力を消耗させることができる。
数的有利を作るシステム変更のデメリットとは
システム変更中は各選手がポジションチェンジを行うのだが、全員のタイミング合うわけではないため、選手の配置が不安定な状態(いびつなシステム)になる。
その状態でボールを奪われると守備陣形が整わないため、カウンターを受けやすい状態になる。
▶攻守の切り替え「トランジション」とは
システム変更の具体的な例
攻撃時の数的有利を作るシステム変更
攻撃時のビルドアップの際に、SBやWBが上下することで、数的有利を作り出しやすくなる。
▶GKからのビルドアップのシステム変更
【例】ビルドアップの4-3-3から3-4-3へシステム変更
ボールを運びながらシステム変更により、中盤(MFの列、6,10,8,2)の人数を増やした。
【補足】数的有利を作る攻撃戦術
- オーバーロード
ボール周りに複数の選手を集中させることで相手を数で圧倒し、有利な状況を作る。 - アンバランス
サッカーのシステムは左右対称である必要はなく、全体がボールサイドに偏ることで数的有利を作ることもできる。
逆サイドには大きなスペースができるため、ドリブラーがパスを待つアイソレーションという戦術と組み合わせると効果的な攻撃となる。
▶ドリブラーが孤立して待つアイソレーションとは - 裏への抜け出し
ディフェンスラインの背後を狙うことで数的有利を作り出し、ゴールに迫る。
守備時の数的有利を作るシステム変更
守備の際には、相手ボール保持時に自陣に多くの選手を配置することで、失点を減らす。
▶超攻撃型の守備陣形「改良型カテナチオ」
【例】移動する4-4-2の守備陣形
攻撃時のシステムとは異なり、守備時は4-4-2や4-4-1-1、5-4-1、4-5-1などチームや状況により守備陣形を代える。
【補足】数的有利を作る守備戦術
- ラインコントロールとオフサイドトラップ
ラインコントロールにより相手FWをオフサイドポジションにすることでマークを外し、ボール付近で数的有利を保つ。 - ゾーンプレス
偏るのではなく、守備陣形の距離間を狭めることで全体的に密集し、数的有利を作る。 - パスのコース切り
ボールホルダーに積極的にプレッシャーをかけ、パスコースを消すことで数的有利なエリアへ誘い込む。
システム変更を成功させるための状況判断
システム変更を成功させるためには、以下の点に注意する必要があります。
- 選手の理解度
紙面上などで理論的に実践するシステムとシステム変更のタイミングを理解する。 - 練習の積み重ね
恐らくどの高さからシステム変更を行うのかが課題になるため、試合前に十分な練習を行い、声をかけ合うなどの連携も強化する必要がある。 - 状況に応じた判断
例えば攻撃時のビルドアップの場合、相手のチームの守備戦術など状況に応じて、臨機応変にシステム変更を行う高さを変える必要が出るだろう。
数的有利を作るシステム変更は、サッカーにおいて非常に重要な戦術。しかし、システム変更は万能ではなく、メリットとデメリットを理解し、チームの状況に合わせて最適な選択をする必要がある。
本記事が、読者の皆様のサッカーの理解の一助となれば幸いです。