
この記事で分かること
- ブラジル代表がグループCをどう突破したのか
- アンチェロッティ監督のブラジルが大会中にどう変化したのか
- モロッコ戦で見えたブラジル代表の弱点
- スコットランド戦で見えたブラジル代表の改善点
- ヴィニシウス、クーニャ、パケタ、ブルーノ・ギマランイスの関係性
- 日本代表がブラジルに勝つための守備方針
- 日本代表が狙うべきカウンターと疑似カウンター
北中米ワールドカップに向けた主な試合日程
親善試合
・5月31日(日)vs アイスランド(東京:国立競技場)
北中米ワールドカップ(W杯)-グループステージ
・6月15日(月)vs オランダ代表(アメリカ:ダラス)
・6月21日(日)vs チュニジア代表(メキシコ:モンテレイ)
・6月26日(金)vs スウェーデン代表(アメリカ:ダラス)
北中米ワールドカップ(W杯)-ノックアウトステージ
・6月30日(火)vs ブラジル(アメリカ:ヒューストン)
(※ 時間はすべて日本時間)
ブラジル代表は強い?日本代表が対戦するブラジル代表の戦術分析
日本代表がラウンド32で対戦する相手は、グループCを1位で突破したブラジル代表に決まりました。
ブラジル代表といえば、ヴィニシウス・ジュニオール、ネイマール、マテウス・クーニャ、ルーカス・パケタ、ブルーノ・ギマランイス、カゼミーロ、マルキーニョス、ガブリエウなど、世界的な選手を揃える優勝候補の一角です。
ただし、今大会のブラジル代表は、最初から完成されていたわけではありません。
グループステージ初戦のモロッコ戦では、1-1の引き分けに終わり、攻撃の停滞、ビルドアップの不安定さ、守備から攻撃への切り替えに課題を見せました。
しかし、ハイチ戦、スコットランド戦と試合を重ねる中で、カルロ・アンチェロッティ監督の修正が入り、徐々にチームとして整理されてきています。
日本代表にとって怖いのは、ブラジル代表が大会中に修正され、徐々にアンチェロッティ色を強めていることです。
モロッコ戦では不安定さを見せましたが、ハイチ戦、スコットランド戦では前線からの守備、左サイドの連係、ヴィニシウスの決定力が強まってきました。
だからこそ、日本代表はブラジルを「個人技だけのチーム」と見てはいけません。
現在のブラジルは、前線のスター選手を並べているだけではなく、ヴィニシウスをゴールに近い位置で活かすために、チーム全体の役割を整理しているチームです。
- ブラジル代表は強い?日本代表が対戦するブラジル代表の戦術分析
- ブラジル代表のグループステージ結果
- 海外メディアはブラジルをどう評価しているのか
- アンチェロッティのブラジルはどう再編されたのか
- モロッコ戦で見えたブラジル代表の課題
- スコットランド戦で見えたブラジル代表の完成度
- ブラジル代表の基本戦術とシステム
- 日本代表はブラジルにどう対抗するべきか
- アンチェロッティのブラジルと、日本代表の調整遅れ
- 本来はグループステージで戦術を進化させるはずだった
- ブラジル戦では「完成された戦術」よりも「できる戦術」が重要になる
- 前後半を見据えた交代戦術
- 守備時の基本システムは4-4-2か5-4-1に変化する
- 守備方針①:ブラジルに「気持ちよく持たせない」
- 守備方針②:ヴィニシウスは1対1ではなく2.5人で止める
- 終盤にネイマールが出たら中央をさらに締める
- 基本はカウンターとポゼッションを両立させる
- 攻撃時の基本システム
- 攻撃方針①:前半カウンターの出口は日本の右サイド
- 攻撃方針②:無理なカウンターはブラジルに攻撃機会を返すだけ
- 攻撃方針③:形が悪ければポゼッションに戻して疑似カウンターを作る
- 一番重要なのは「奪った後の一手」
- まとめ|日本代表はブラジルの得意な流れに入らせないことが重要
ブラジル代表のグループステージ結果
ブラジル代表は、グループCでモロッコ代表、ハイチ代表、スコットランド代表と対戦しました。
初戦のモロッコ戦では1-1の引き分け。第2戦のハイチ戦では3-0で勝利。第3戦のスコットランド戦でも3-0で勝利し、グループCを1位で突破しました。
- 第1戦:ブラジル代表 1-1 モロッコ代表
- 第2戦:ブラジル代表 3-0 ハイチ代表
- 第3戦:ブラジル代表 3-0 スコットランド代表
- 最終順位:グループC 1位通過
- ラウンド32:ブラジル代表 vs 日本代表
数字だけを見ると、ブラジル代表は順当に1位通過したように見えます。
しかし、内容を見ると、初戦のモロッコ戦ではかなり苦しみました。
モロッコ代表は、ブラジルにボールを持たせながらも中央を簡単には使わせず、奪った後は素早く前線へ展開しました。
ブラジルはヴィニシウスの個人技で同点に追いついたものの、チーム全体として相手を崩し切った試合とは言いにくい内容でした。
日本代表が参考にしたいのは、ブラジルが勝った試合よりも、ブラジルが苦しんだモロッコ戦です。
ブラジルの攻撃を完全に止めることは難しくても、中央を閉じ、ヴィニシウスへの供給を限定し、奪った後に速く出せれば、ブラジルにも苦しい時間を作れます。
海外メディアはブラジルをどう評価しているのか
日本がブラジル対策を考えるうえで重要なのは、日本目線だけでなく、欧州や南米のメディアが現在のブラジルをどう見ているかです。
海外メディアの評価を整理すると、現在のブラジル代表は大きく三つの見方ができます。
- 初戦では弱点を見せた:モロッコ戦でビルドアップ、中央攻略、カウンター対応に課題
- 大会中に改善している:ハイチ戦、スコットランド戦で攻守の整理が進んだ
- 本当の強度はまだ未知数:強豪国や組織的な相手に対してどこまで通用するかは、日本戦が試金石
Reutersの評価|ブラジルは「チーム」になりつつある
Reutersは、ブラジルがスコットランド戦で3-0と快勝し、グループCを1位で突破したことを伝えています。
特に重要なのは、アンチェロッティ監督がブラジルについて「チームとしてプレーできるようになってきた」と評価している点です。
ただし同時に、ボール保持時のスピードや完成度にはまだ改善の余地があるとも見ています。
つまり、ブラジルはすでに強いチームですが、完全無欠の完成形ではありません。
読み取り ブラジルは大会中に良くなっていますが、保持時のテンポ、中央の崩し、強い相手に押し返された時の対応には、まだ狙える部分があります。
ブラジル国内メディアの評価|日本戦はモロッコ戦に近いテスト
ブラジル国内メディアでは、日本戦を簡単な試合とは見ていません。
むしろ、日本代表はブラジルが苦戦したモロッコ戦に近いレベルの難しい相手になる、という見方もあります。
これは日本代表にとって大きなヒントです。
ブラジル側も、日本を単なる格下とは見ていません。
組織的に守り、切り替えが速く、前線にスピードがあり、少ないチャンスを決める力があるチームとして警戒しています。
日本代表は「ブラジルに挑む弱者」ではなく、ブラジルにとっても嫌な特徴を持つ相手です。
だからこそ、受け身になりすぎるより、自分たちの強みをどうぶつけるかが重要になります。
GEの戦術分析|ブラジルは守備時4-4-2でヴィニシウスを残す
ブラジル国内の戦術分析では、スコットランド戦のブラジルは守備時に4-4-2気味になっていたと整理されています。
マテウス・クーニャが下がって第一プレッシャーを作り、パケタと右サイドの選手が両脇を閉じ、ブルーノ・ギマランイスとカゼミーロが中央を支える。
そして、ヴィニシウスは前に残り、奪った瞬間に一気にゴールへ向かう。
この形が現在のブラジルの怖さです。
- 前線:クーニャが守備に参加し、ヴィニシウスを前に残す
- 中盤:パケタ、ブルーノ、カゼミーロ、右サイドの選手で4枚を作る
- 狙い:中央を閉じながら、奪った瞬間にヴィニシウスへ速く出す
- 危険性:日本が中央で失うと、ブラジルのショートカウンターを受ける
アンチェロッティのブラジルはどう再編されたのか
現在のブラジル代表を語るうえで欠かせないのが、カルロ・アンチェロッティ監督の存在です。
アンチェロッティ監督は、レアル・マドリードなどで多くのタイトルを獲得してきた名将です。
ブラジル代表は、個の能力では世界トップクラスの選手を揃えていますが、近年はその個の力をチームとしてどう整理するかが課題になっていました。
アンチェロッティ監督の役割は、単に攻撃的なブラジルを復活させることではありません。
むしろ、ヴィニシウス、ネイマール、パケタ、ブルーノ・ギマランイス、カゼミーロといった選手を、チームとして機能する配置に整理することが重要になります。
- 目的:個の能力をチーム戦術の中で整理する
- 攻撃:ヴィニシウスを中心に左サイドから崩す
- 守備:前線からのプレスと即時奪回を強める
- 中盤:ブルーノ・ギマランイスとカゼミーロでバランスを取る
- 変化:クーニャやパケタが前線と中盤の接続役になる
- 課題:右サイドの攻撃、保持時のテンポ、強い圧力を受けた時の前進
アンチェロッティのブラジルは「華やかさ」より勝つための整理
アンチェロッティ監督のブラジル代表は、単純に派手な攻撃だけを目指しているわけではありません。
ブラジルらしい個人技を残しながらも、守備時の立ち位置、前線からのプレス、奪った後の縦への速さを整理しています。
特に大きいのは、マテウス・クーニャの存在です。
クーニャが前線から中盤へ下りることで、ヴィニシウス、パケタ、ブルーノ・ギマランイスとの距離感が改善されました。
その結果、ブラジルは左サイドからの攻撃だけでなく、守備から攻撃への切り替えもスムーズになっています。
現在のブラジル代表は、スター選手を並べるチームではなく、ヴィニシウスを最大化するために周囲の役割を整理しているチームです。
日本代表としては、ブラジルの名前に怯えるのではなく、どの選手がどの役割で機能しているのかを見極める必要があります。
モロッコ戦で見えたブラジル代表の課題
ブラジル代表の弱点を考えるうえで、最も参考になるのは初戦のモロッコ戦です。
この試合でブラジル代表は、モロッコ代表の守備ブロックとカウンターに苦しみました。
モロッコ代表は、ブラジルにボールを持たせながらも、良い形で前進させませんでした。
中央のパスコースを消し、ヴィニシウスにボールが入る前の段階でテンポを落とさせ、奪った後は素早くカウンターを狙いました。
- 前半の入り:試合への入りが硬く、ミスが出た
- ビルドアップ:保持はできても、中央を崩し切れない場面があった
- カウンター対応:モロッコの素早い攻撃で先制を許した
- 左サイド依存:ヴィニシウス側に攻撃が寄りやすい
- 中盤の機動力:カゼミーロ周辺のスペースを問われる場面がある
- 保持時のテンポ:相手に中央を閉じられると、攻撃が停滞する時間がある
※メンバー表と立ち位置から見た基本形。実際には守備時4-4-2、攻撃時4-2-4や左サイド偏重の可変配置に近い場面があります。
モロッコはブラジルに「気持ちよく持たせなかった」
モロッコ戦で重要だったのは、単にブラジルを守ったことではありません。
ブラジルにボールを持たせながらも、中央を使わせず、ヴィニシウスに良い形で前を向かせず、奪った後に素早く前へ出しました。
この試合は、日本代表にとっても参考になります。
ブラジル代表を相手にする時、ボールを完全に奪い続けることは難しいでしょう。
しかし、どこで持たせるか、どこで前進を止めるか、奪った後にどこへ出すかを整理できれば、ブラジルにも苦しい時間を作ることはできます。
ブラジル対策では、ボールを持たれること自体を恐れすぎるより、ブラジルに気持ちよく前進させないことが重要です。
中央を閉じ、ヴィニシウスへの供給を限定し、奪った後に素早く前へ出せれば、日本にも勝機はあります。
スコットランド戦で見えたブラジル代表の完成度
第3戦のスコットランド戦では、ブラジル代表が3-0で勝利しました。
この試合では、ヴィニシウス・ジュニオールが大きな存在感を見せ、ネイマールも代表復帰を果たしました。
ただし、戦術的により重要なのは、ブラジルがボールを持つだけでなく、ボールを失った後や相手のビルドアップに対して、前線から強く圧力をかけていたことです。
ブラジルは、相手のミスを待つだけではなく、前線からのプレスでミスを誘い、奪った瞬間に速く攻撃へ移る形を見せました。
- 前線からのプレス:相手のビルドアップに圧力をかけ、ミスを誘う
- 守備時4-4-2:クーニャが下がり、ヴィニシウスを前に残す
- 奪って速い攻撃:高い位置で奪い、ヴィニシウスへ素早くつなぐ
- 左サイドの完成度:ヴィニシウス、パケタ、クーニャ、ドウグラスの関係性が向上
- ネイマールの復帰:途中出場でも攻撃の選択肢を増やす存在になった
- チームの安定:モロッコ戦よりも攻守のバランスが整った
ブラジルは「奪ってから速い」チームになっている
ブラジル代表というと、ボールを持って個人技で崩すイメージが強いかもしれません。
しかし、アンチェロッティ体制で見えてきたのは、ボール保持だけでなく、前線から奪って速く攻める形です。
特にスコットランド戦では、前線からのプレスによって相手のミスを誘い、そこから一気にゴールへ向かう形が見られました。
日本代表にとって怖いのは、ブラジルに押し込まれることだけではありません。
むしろ、日本がビルドアップで不用意に失った瞬間に、ヴィニシウス、クーニャ、パケタ、ネイマールへ一気に運ばれることが最も危険です。
ブラジル戦では、ただ守るだけでなく、どこで失わないかが重要になります。
日本代表が中央で雑に失えば、ブラジルの前線プレスとショートカウンターの餌食になる可能性があります。
ブラジル代表の基本戦術とシステム
ブラジル代表は、基本的には4バックをベースにしながら、中盤と前線の距離感を調整する形を取っています。
アンチェロッティ監督は、固定されたシステムというより、選手の特徴を活かしながら、試合ごとにバランスを整えるタイプの監督です。
今大会のブラジル代表を見ると、攻撃時は4-2-4や4-2-3-1に近く、守備時は4-4-2に近い形で整理される場面があります。
- 左サイド:ヴィニシウス、パケタ、クーニャ、ドウグラスが関わる主戦場
- 中央:クーニャが前線と中盤をつなぐ
- 中盤:ブルーノ・ギマランイスが展開、カゼミーロがバランスを取る
- 右サイド:ラフィーニャ不在時はRayanなどの起用で調整
- 守備:前線からのプレスで相手のミスを誘う
- 切り札:ネイマールが途中出場で中央やハーフスペースに変化を加える
最大の武器はヴィニシウス・ジュニオール
ブラジル代表の最大の武器は、やはりヴィニシウス・ジュニオールです。
モロッコ戦では、ブラジルが苦しむ中で個人技から同点ゴールを決めました。
スコットランド戦でも大きな存在感を見せ、ブラジルの攻撃の中心になっています。
ヴィニシウスは、左サイドでボールを受けてからの突破だけでなく、裏抜け、カットイン、ゴール前への侵入でも違いを作る選手です。
日本代表としては、単純に1対1で止めるのではなく、そこへ良い形でボールを入れさせない守備が必要になります。
ヴィニシウスを止めるには、対面のDFだけでなく、パスの出し手と受ける位置を制限する必要があります。
日本の右サイドは、菅原、伊東または堂安、さらにボランチのカバーを含めた「2.5人」で対応したいところです。
Rayanの前線プレスにも注意が必要
ラフィーニャが負傷したことで、Rayanが右サイドで起用される可能性があります。
Rayanは若い選手ですが、スコットランド戦では前線からの守備でブラジルの先制点に関わりました。
これは日本代表にとってかなり重要です。
ブラジルの右サイドを「若手だから狙える」と考えすぎると、逆に前線プレスで奪われる危険があります。
- 強み:前線からの守備、スピード、縦への推進力
- 危険:日本の左サイドやCBからの不用意な横パスを狙われる
- 対策:ボールを受ける前に次の逃げ道を作っておく
- 狙い:背後を取れる場面では早めに前田大然を使う
ネイマール復帰で攻撃の選択肢が増えた
スコットランド戦では、ネイマールが代表に復帰しました。
長期離脱明けのため、いきなりフル稼働する状態ではないかもしれません。
しかし、途中出場でもネイマールがいることで、ブラジルの攻撃には別の選択肢が生まれます。
ヴィニシウスが左サイドで相手を引きつけ、ネイマールが中央やハーフスペースで受ける形になれば、日本代表の守備はさらに難しくなります。
ネイマールが出てきた時に怖いのは、単純なドリブルよりも、中央で前を向かれてラストパスやFKを与えることです。
日本代表は、終盤に不用意なファウルを減らし、ペナルティーエリア手前でネイマールに時間を与えないことが重要になります。
日本代表はブラジルにどう対抗するべきか
ここまでブラジル代表のグループステージでの戦い方、アンチェロッティ監督による修正、モロッコ戦で見えた課題を整理してきました。
では、日本代表がブラジル代表と戦う場合、どのような戦い方を目指すべきでしょうか。
基本的には、モロッコがブラジルに対して見せたように、中央を閉じて、ブラジルに気持ちよく前進させないことが重要になります。
ただし、日本代表が目指すべきなのは、ただ守って耐えるだけのサッカーではありません。
ビリーの考える基本方針は、中央を閉じてブラジルに良い形で前進させず、奪える時はカウンターを狙い、難しければ広く展開してポゼッションへ切り替えることです。
また、相手陣地内では左右へ逃がし、無理なら後方へ戻して、再び疑似カウンターの形を作り直す必要があります。
ブラジル戦で重要なのは、カウンターに行ける時は速く、無理ならポゼッションに戻す判断です。
ブラジル相手に中途半端なロストを増やすと、ヴィニシウス、クーニャ、パケタ、ネイマールに一気に運ばれる危険があります。
アンチェロッティのブラジルと、日本代表の調整遅れ
ブラジル代表を考えるうえで重要なのは、アンチェロッティ監督が大会中にチームを調整し続けていることです。
初戦のモロッコ戦では、ブラジル代表にもビルドアップの不安定さ、攻撃の停滞、前半の入りの悪さが見られました。
しかし、ハイチ戦、スコットランド戦と試合を重ねる中で、マテウス・クーニャの起用、ヴィニシウスを中心にした左サイドの整理、前線からのプレス強化など、少しずつチームとしての形を整えてきています。
一方で、日本代表は、チームとしての進化が遅れているように見えます。
本来であれば、オランダ戦から始まるグループステージの中で、未完成だったチーム戦術の精度を上げていく必要がありました。
ところが、開幕前から怪我人が増え、開幕後も主力に故障が相次いだことで、チーム全体の調整はかなり難しくなっています。
スタメン以外にもコンディションに不安を抱える選手が多いと予想される状況で、ブラジル代表のような強豪に対して、どこまで戦術を整理できるかが大きな課題になります。
ブラジル代表が大会中に整理されている一方で、日本代表は怪我人の影響もあり、チーム戦術の調整が遅れているように見えます。
この差が、ラウンド32のブラジル戦ではかなり大きなポイントになります。
本来はグループステージで戦術を進化させるはずだった
日本代表は、オランダ戦、チュニジア戦、スウェーデン戦を通して、チーム戦術の完成度を高める必要がありました。
オランダ戦では、強豪相手にどこまでビルドアップできるか、どこで疑似カウンターを作れるかを確認する試合でした。
チュニジア戦では、相手を押し込みながら、同サイド圧縮、逆サイド展開、渦の動きの精度を上げる試合にしたかったところです。
そしてスウェーデン戦では、前線に強力な選手を持つ相手に対して、無駄なロストを避けながらポゼッションし、疑似カウンターへつなげる形を確認する必要がありました。
しかし実際には、試合を重ねる中で戦術が明確になるどころか、チームとして何を軸にするのかが少し曖昧になってきたようにも見えます。
- オランダ戦:強豪相手に通用するビルドアップと守備基準の確認
- チュニジア戦:同サイド圧縮、逆サイド展開、渦の動きの精度向上
- スウェーデン戦:無駄なロストを避けたポゼッションと疑似カウンターの整理
- 理想:ラウンド32に向けて、チーム戦術を大会中に成熟させる
- 現状:怪我人や主力の故障もあり、戦術の整理が遅れている
ブラジル戦では「完成された戦術」よりも「できる戦術」が重要になる
この状況でブラジル代表と戦う場合、日本代表が理想だけを追いかけるのは危険です。
本来やりたかった戦術と、現在のメンバーで実行できる戦術は分けて考える必要があります。
怪我人が多く、主力のコンディションにも不安があるなら、複雑な可変システムを最初から多用するより、まずはチーム全体で守備の基準をそろえることが重要になります。
そのうえで、奪った後の出口を明確にし、カウンターに行ける時だけ速く攻める。
形が悪ければ、無理に縦へ急がず、ポゼッションへ戻してブラジルの攻撃回数を減らす。
ブラジル戦で日本代表に必要なのは、完成度の低い理想を無理に出すことではなく、今できる戦術を整理して、チーム全体で共有することです。
ブラジル戦では、理想の戦術よりも「今の日本代表が実行できる戦術」を選ぶ必要があります。
怪我人が多い状況では、複雑な形を増やすより、守備の基準、奪った後の出口、無理なら戻す判断をチーム全体でそろえることが重要になります。
前後半を見据えた交代戦術
ブラジル戦では、前半から全力で走り切るだけではなく、後半の交代戦術まで含めて考える必要があります。
特に、菅原由勢、冨安健洋、伊藤洋輝などの体力やコンディションに不安がある場合、前半だけ起用する選手、後半から入れる選手、最初から交代する選手を明確にしておく必要があります。
前半は4-2-3-1で中央を閉じながら入り、ブラジルの左サイド、特にヴィニシウスへの供給を制限したいところです。
菅原由勢と冨安健洋が行ける場合は、前半だけでもヴィニシウス対策として使いたいところです。難しい場合は、最初から堂安律や渡辺剛を使う選択も考えられます。
冨安健洋が行ける場合は、伊藤洋輝を長友佑都、鈴木淳之介や渡辺剛に代える形も考えられます。
後半は3-4-3に近い形へ変化し、サイドの出口を作りながらカウンターと疑似カウンターを狙います。
冨安健洋に代えて伊藤洋輝を入れ、伊藤洋輝、谷口彰悟、渡辺剛の3バックへ移行する案もあります。
谷口 ↔ 渡辺-冨安 → 伊藤-谷口-渡辺
ただし、ヴィニシウス対策のために渡辺をフレッシュな状態で出したいところ。
守備時の基本システムは4-4-2か5-4-1に変化する
日本代表は、守備時に鎌田大地が上田綺世の近くまで出て、4-4-2に近い形で構えるのが良さそうです。
狙いは、ブラジルのCBからカゼミーロ、ブルーノ・ギマランイス、パケタへ入る縦パスを制限することです。
以下の名前は、各選手のコンディションが分からないため、あくまでもイメージで考えてください。
※ボールが日本の右サイドに来ている時のイメージ。
上田綺世と前田大然で中央への入り口を消し、サイドへ誘導してから奪う形を作ります。
前半だけでも菅原由勢を使える場合は、ヴィニシウスに対してマンツーマン気味にディレイをかけ、佐野海舟と伊東純也のヘルプを待つ形が理想になります。
ブラジル代表も両サイドへ振りながら中央をこじ開ける疑似カウンターに近い攻撃を多用してきます。
そのため、日本代表は時間帯によって5バック気味に構え、ヴィニシウス、クーニャ、パケタ、ネイマールが中央で前を向く場面を減らしたいところです。
EURO2024でも見られた、ボールサイドへ強く制限をかける守備システムです。
上田綺世が中央でパスコースを切り、前田大然と伊東純也がボールホルダーへプレスをかけます。
相手がサイドチェンジを行った場合は、伊東純也がボールホルダーへプレスをかけ直し、前田大然は2列目の近い位置に戻ります。プレーが切れた時は、鎌田大地の外側へ戻るイメージです。
両サイドの中村敬斗と菅原由勢は相手WGにマンツーマン気味で付きます。2列目よりも前に出すぎず、MFとDFの列で相手に対応することが重要です。
守備方針①:ブラジルに「気持ちよく持たせない」
ブラジル代表に対して、ボール保持率で上回ることは簡単ではありません。
そのため日本代表は、ブラジルにボールを持たれる時間があることを前提に考える必要があります。
しかし、ボールを持たれることと、気持ちよく前進されることは別です。
モロッコ戦でブラジルが苦しんだように、中央を閉じ、ヴィニシウスへの供給を限定し、ブラジルの攻撃を外側へ誘導できれば、ブラジルにも停滞する時間を作ることができます。
- ハイプレス:常に行うのではなく、流れの中で限定的に行う
- ミドルサードから守備:基本はミドルサードで守り、むやみに下がりすぎない
- 中央を閉じる:パケタ、クーニャ、ネイマールが前を向く場所を消す
- ヴィニシウスへの供給を制限する:左サイドで1対1を作らせすぎない
- 外側へ誘導する:ブラジルの攻撃をサイドへ逃がし、中央突破を防ぐ
- 奪いどころを決める:無理に追い回さず、横パスや戻しの瞬間を狙う
- 中央ロストを避ける:日本のビルドアップで中央に不用意な横パスを入れない
守備方針②:ヴィニシウスは1対1ではなく2.5人で止める
ブラジル戦で最も危険なのは、ヴィニシウスが左サイドで前を向く場面です。
日本の右サイドバックだけで止めようとすると、かなり厳しい戦いになります。
そのため、ヴィニシウス対策は1対1ではなく、2人から2.5人で考えるべきです。
- 対面:菅原由勢または堂安律が縦を簡単に突破させない
- 前の選手:伊東純也が戻ってパスコースを切る
- 中のカバー:佐野海舟または鎌田大地がハーフスペースを埋める
- CBの対応:冨安健洋、渡辺剛、谷口彰悟が内側への侵入を警戒する
大事なのは、ヴィニシウスにボールが入ってから慌てるのではなく、入る前にパスの出し手と受ける位置を制限することです。
終盤にネイマールが出たら中央をさらに締める
ネイマールが途中出場してきた場合、日本代表は中央の管理をさらに厳しくする必要があります。
ヴィニシウスが左で相手を引きつけ、ネイマールが中央やハーフスペースで受ける形になると、ブラジルの攻撃は一段階難しくなります。
その時間帯では、無理に前から奪いに行くよりも、ペナルティーエリア手前を閉じ、不用意なファウルを避けることが重要です。
終盤のブラジル戦で一番怖いのは、ネイマールに中央で前を向かれ、ヴィニシウスやクーニャへラストパスを出されることです。
日本代表は、守備の集中を切らさず、ゴール前のファウルと中央ロストを減らす必要があります。
基本はカウンターとポゼッションを両立させる
日本代表がブラジル戦で行う攻撃戦術は、これまでのシリーズで整理してきた考え方と大きく変わりません。
※システム図など攻撃戦術の詳細はシリーズ記事を参照。
基本は、守備からのカウンターを中心にしながら、無理なボールロストを避けることです。
ブラジル代表のように前線からのプレスと即時奪回が強い相手に対しては、奪った瞬間に必ず前へ急げば良いわけではありません。
狙いたいのは、高い位置での同サイド圧縮です。
片方のサイドに相手を引き寄せ、そこで人数をかけてボールを奪う。そこから逆サイドで待つウイングに展開し、アイソレーションの形から疑似カウンターを狙います。
日本代表の攻撃の理想は、「奪ったら速く」だけではなく、「奪って、相手を寄せて、逆サイドで勝負する」形です。
ブラジルの守備が同サイドに寄った瞬間に、逆サイドのウイングへ展開できれば、日本代表にも大きなチャンスが生まれます。
ただし、逆サイドへの展開やカウンターが難しい場合は、無理に縦へ急ぐ必要はありません。
その場合は、ボールロストを避けるために、相手陣地内で一度ポゼッションへ切り替えます。
そして、再びどちらかのサイドで同サイド圧縮を作り、相手を引き寄せてから、逆サイドのウイングへ展開する。
この流れを繰り返すことで、ブラジルの前線プレスを受け流しながら、疑似カウンターの形で日本のスピードを活かすことができます。
攻撃時の基本システム
ブラジル戦では、最初から完全に引きすぎると、ブラジルに押し込まれ続ける可能性があります。
そのため、日本代表は、守備的になりすぎない3-4-3を基本にしたいところです。
ただし、守備時は4-4-2や5-4-1に近い形へ変化させ、上田綺世、前田大然、鎌田大地でブラジルの中央への入り口を制限する形が良さそうです。
守備時は中央を閉じ、前半の攻撃時は左サイドで同サイド圧縮を行い、右サイドでアイソレーションを行う伊東へ逃がしてカウンターを狙う形を作りたいところ。
その時、佐野がシャドーの位置近くまで上がり、伊東へ繋ぐか、前田と上田に出しても構いません。
菅原由勢、冨安健洋はヴィニシウス対策として前半だけでも行ければ出したいところです。難しい場合は、最初から堂安律、渡辺剛に代える選択も考えられます。
伊藤洋輝が体力切れになっている場合は、鈴木淳之介を使う形も候補になります。
後半、日本代表は中盤からビルドアップを行い、左右で疑似カウンターの準備を行います。
DFとDMの列では左右で渦の動きを行いながら、逆サイドではWGとWBが渦の動きを行い、人海戦術的なアタックを仕掛けます。
また無理にセンタリングを上げたり、ドリブルで仕掛けるのではなく、無駄なロストを抑えるためにポゼッションへと切り替えて、DFやDM、WBにボールを戻し、全体ごと下がり、相手のディフェンスラインも下がるようにします。
ポゼッションを繰り返しながら左右で疑似カウンターを行い、相手ディフェンスのほころびを狙いたいところです。
攻撃方針①:前半カウンターの出口は日本の右サイド
ブラジル代表の攻撃は、ヴィニシウスを中心に左サイドから強くなります。
これはブラジルの最大の武器ですが、同時に日本代表が狙えるポイントにもなります。
ヴィニシウス、パケタ、クーニャ、ドウグラスが左サイドに関わると、ブラジルの攻撃はかなり強力になります。
しかし、その分、ボールを失った瞬間には、ブラジルの左サイド(日本の右サイド)側にスペースが生まれる可能性があります。
日本代表としては、奪った瞬間に右サイドへ逃がし、伊東純也、堂安律、菅原由勢を使って、ブラジルの左サイド裏を狙いたいところです。
- 奪う場所:中央から日本の右寄り、またはブラジルの左サイド攻撃の後
- 逃がす方向:日本の右サイド
- 使いたい選手:伊東純也、堂安律、菅原由勢
- 狙い:ブラジルの左サイド裏、またはCB脇のスペース
- 仕上げ:上田綺世へのクロス、鎌田大地のセカンドボール、逆サイド前田大然の飛び込み
攻撃方針②:無理なカウンターはブラジルに攻撃機会を返すだけ
ただし、ブラジル戦で最も避けたいのは、無理なカウンターです。
奪った瞬間に前へ行けそうに見えても、味方のサポートが間に合っていない場合があります。
その状態で強引な縦パスや無理なドリブルを選ぶと、ブラジルにすぐ奪い返され、ショートカウンターを受けることになります。
ブラジル代表は、前線からのプレスと即時奪回が強くなっているため、日本が雑にボールを失えば、一気にゴール前まで運ばれる危険があります。
ブラジル戦のカウンターは、速さだけでなく「行くか、戻すか」の判断が重要です。
カウンターに行けない形なら、無理に攻め切らず、ポゼッションへ切り替えてブラジルの攻撃回数を減らす必要があります。
攻撃方針③:形が悪ければポゼッションに戻して疑似カウンターを作る
日本代表がブラジルに対抗するためには、カウンターだけでなく、ポゼッションへの切り替えも必要になります。
奪った後に前へ行けない場合は、無理に縦へ急がず、後方へ戻して作り直す。
これは消極的なプレーではありません。
ブラジルの前線を一度引き出し、相手のラインを上げさせることで、その背後にスペースを作ることができます。
そのうえで、再び右サイド、逆サイド、または上田綺世への縦パスを狙えば、疑似カウンターの形を作ることができます。
- 中央を閉じて守る
パケタ、クーニャ、ネイマールに前を向かせない。 - ヴィニシウス側を限定する
1対1を完全に避けるのではなく、カバーを用意して外へ誘導する。 - 奪ったら右サイドへ逃がす
伊東純也、堂安律、菅原由勢を使って、ブラジルの左サイド裏を狙う。 - 無理ならポゼッションへ戻す
強引な縦パスや無理なドリブルで、ブラジルに攻撃機会を返さない。 - ラインを上げさせて再び疑似カウンター
CBまで戻してブラジルを引き出し、背後や逆サイドを狙う。
一番重要なのは「奪った後の一手」
ブラジル戦で一番重要なのは、奪うことそのものではありません。
奪った後に、どこへ出すのか。
そして、カウンターに行けない時に、どう作り直すのか。
ここが整理されていないと、日本代表はブラジルの即時奪回に飲み込まれます。
逆に、奪った後の一手が整理されていれば、ブラジル相手でもチャンスは作れます。
ブラジル戦では、「奪ったら速く」だけでは足りません。
奪った後に右へ逃がす、無理なら戻す、戻したら相手のラインを上げさせて再び疑似カウンターを狙う。この判断の連続が、日本代表の勝機になります。
まとめ|日本代表はブラジルの得意な流れに入らせないことが重要
ブラジル代表は、グループCを1位で突破しました。
初戦のモロッコ戦では1-1の引き分けに終わり、ビルドアップ、攻撃のバランス、カウンター対応に課題を見せました。
しかし、ハイチ戦、スコットランド戦では3-0で連勝し、アンチェロッティ監督の修正によって、チームとして徐々に整理されてきています。
特に、マテウス・クーニャの起用による左サイドの連係改善、ヴィニシウスの決定力、Rayanの前線プレス、ネイマールの復帰は、日本代表にとって大きな警戒ポイントです。
一方で、ブラジル代表には、モロッコ戦で見えたような不安定さも残っています。
中央を閉じられた時の崩し、右サイドの攻撃、カゼミーロ周辺の強度、プレッシャーを受けた時のビルドアップは、日本代表が狙える可能性のあるポイントです。
日本代表がブラジル戦で勝機を見出すためには、まずブラジルに気持ちよく前進させないこと。
そして、奪った後にどこへ逃がすのか、どこで疑似カウンターを狙うのかを整理する必要があります。
ブラジル戦を見る時は、「ヴィニシウスに良い形で入れさせないこと」「前線プレスを受けた時に日本がどう逃がすか」「ブラジルの左サイドをどう制限するか」「モロッコ戦で見えた弱点を日本が再現できるか」に注目すると、試合のポイントが分かりやすくなります。
参考記事・出典
- Reuters|Japan won't be pushovers against Brazil in knockouts, coach says
- Reuters|Rayan's Japan homework awaits as Brazil eye World Cup last-32 win
- Reuters|Ancelotti tells Brazil to stay calm after Neymar returns and Vinicius sparkles
- GE|A tática de Ancelotti que explica o jogo mais completo do Brasil na Copa
- GE|Dossiê Japão: Os cuidados que o Brasil deve tomar e o que pode explorar
- The Guardian|Brazil World Cup 2026 team guide