
- マルセロ・ビエルサ監督の経歴と人物像
- なぜ「エル・ロコ」と呼ばれるのか
- ビエルサ監督が好むハイプレス、マンツーマン守備、縦に速い攻撃
- スペイン戦で見えるウルグアイ代表のシステムとスタメン
- ウルグアイ代表をどう作り替えてきたのか
- ビエルサラインとは何か
- 日本、ウルグアイ、アルゼンチン、海外メディアでの評価
- 北中米W杯で見えるビエルサ・ウルグアイの理想と現実
ウルグアイ代表を率いるマルセロ・ビエルサ監督は、世界で最も個性的なサッカー指導者の一人です。
ハイプレス、マンツーマン気味の守備、縦に速い攻撃、徹底した分析、選手に求める圧倒的な運動量。
その独特な戦術思想と妥協を許さない姿勢から、ビエルサ監督は「エル・ロコ」、つまり「狂人」と呼ばれてきました。
ただし、この「狂人」という呼び名は、単に変わった人物という意味ではありません。
むしろ、サッカーを徹底的に考え抜き、試合を構造から変えようとする分析官型の名将という意味合いが強いと言えます。
特に有名なのが、シュートの成功確率を考えるうえで重要なエリア認識として語られるビエルサラインです。
ビエルサラインについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
〖エリア戦術〗ビエルサラインかポケットか!? PA付近のエリア戦術を徹底分析!?
ビエルサラインとは、ゴールポストとペナルティーエリアの角を結んだラインを基準に、シュート、クロス、カットインの判断を整理するための考え方です。
この記事では、ビエルサ監督の経歴、性格、戦術、ウルグアイ代表でのチーム作り、そして日本や海外メディアでの評価を整理していきます。
- スペイン戦で見えるビエルサ・ウルグアイの現在地
- ビエルサ監督とは何者か
- なぜ「エル・ロコ」と呼ばれるのか
- ビエルサ監督の戦術的特徴
- ビエルサラインとは何か
- ウルグアイ代表をどう作り替えてきたのか
- 北中米W杯で見えるビエルサ・ウルグアイの理想と現実
- 日本でのビエルサ監督の評価
- 母国アルゼンチンでの評価
- ウルグアイ国内での評価
- 海外メディアはビエルサ・ウルグアイをどう見ているか
- ビエルサ・ウルグアイの強み
- ビエルサ・ウルグアイの弱点
- ビエルサ監督は名将なのか
- まとめ|ビエルサのウルグアイは理想と現実の間で戦っている
スペイン戦で見えるビエルサ・ウルグアイの現在地
この記事を書いている時点で、ウルグアイ代表は北中米W杯のグループステージでスペイン代表と対戦しています。
ここで注目したいのは、単なる勝敗だけではありません。
ビエルサ監督が、スペインのようにボール保持の上手い相手に対して、どのようなシステムで入り、どの選手をどこに置いたのかです。
スペイン戦のウルグアイは、メンバー表上では3バック気味、もしくは可変式の3-4-2-1に近い形で入ったと考えられます。
ただし、これはあくまでメンバー表と配置から見た推定です。試合中の立ち位置によっては、守備時に5バック気味、攻撃時に3バック気味へ変化する可変システムと見ることもできます。
この並びを見ると、ウルグアイは単純な4-3-3ではなく、3バック+両サイドの幅+バルベルデの前進力を使って、スペインのボール保持に対抗しようとした形に見えます。
戦術ポイント スペイン相手に真正面から4-3-3でプレスをかけるだけでは、ロドリ、ペドリ、ラミン・ヤマルに外される危険があります。
そのため、ビエルサ監督は前線の圧力を残しつつ、中盤とサイドの人数を増やして、スペインの保持時間を削ろうとした可能性があります。
なぜ3バック気味に見えるのか
ビエルサ監督といえば4-3-3のハイプレスという印象が強いですが、相手や選手構成によって立ち位置は変わります。
今回のスペイン戦では、後方にカセレス、バレラ、オリベラを置き、中盤にウガルテ、ベンタンクール、バルベルデ、カノッビオ、マキシ・アラウホ、サナブリアが並ぶ形になっています。
これは、守備時にはサイドの選手が下がって5バック気味になり、攻撃時にはサイドが高い位置を取り、前線に人数をかけるための可変システムと見ることができます。
つまり、ビエルサ監督は「守備的に引いた」というより、スペインのボール保持に対抗するために、サイドと中盤の人数配置を調整したと考える方が自然です。
バルベルデの役割が最大のポイント
この試合でも、ウルグアイの中心はフェデリコ・バルベルデです。
バルベルデは単なる中盤の一人ではありません。
前からプレスに出る、戻って中盤を埋める、奪った後に縦へ運ぶ、ミドルシュートを狙う。
ビエルサ監督のサッカーで必要な要素を、最も高いレベルで実行できる選手です。
スペイン戦のウルグアイを見る時は、ボールを持っている場面だけでなく、バルベルデがどのタイミングで前に出て、どのタイミングで中盤に戻るかを見ると、ビエルサ監督の狙いが分かりやすくなります。
ビエルサ監督とは何者か
マルセロ・ビエルサは、1955年生まれのアルゼンチン人監督です。
現役時代はディフェンダーでしたが、選手としてよりも指導者として圧倒的に大きな影響を残してきました。
監督としては、ニューウェルズ・オールドボーイズ、ベレス、アルゼンチン代表、チリ代表、アスレティック・ビルバオ、マルセイユ、リール、リーズ・ユナイテッド、そして現在のウルグアイ代表などを率いてきました。
ポイント ビエルサ監督はタイトル数だけで評価されるタイプの監督ではありません。
むしろ、グアルディオラ、ポチェッティーノ、シメオネ、サンパオリなど、多くの指導者に影響を与えた「監督たちの先生」として評価されています。
ビエルサ監督の主な経歴
- ニューウェルズ・オールドボーイズ:アルゼンチン国内で頭角を現す
- アルゼンチン代表:2002年W杯、2004年アテネ五輪金メダル
- チリ代表:2010年W杯で攻撃的なチリ代表を構築
- アスレティック・ビルバオ:欧州で強烈なインパクトを残す
- リーズ・ユナイテッド:16年ぶりのプレミアリーグ昇格を達成
- ウルグアイ代表:2023年から代表監督として新世代を構築
アルゼンチン代表では2002年W杯でグループステージ敗退という大きな失敗を経験しました。
しかし、2004年アテネ五輪ではアルゼンチン代表を金メダルに導き、ビエルサ監督の評価は再び高まりました。
その後のチリ代表では、後に南米を制するチリ黄金世代の土台を作った人物として語られています。
また、リーズ・ユナイテッドでは、長くプレミアリーグから離れていたクラブを昇格へ導き、イングランドでも強烈な人気を獲得しました。
なぜ「エル・ロコ」と呼ばれるのか
ビエルサ監督の愛称はエル・ロコです。
日本語にすると「狂人」と訳されますが、悪口というよりは、常識外れなほどサッカーに没頭する人物というニュアンスです。
ビエルサ監督は、試合映像の分析、相手チームの研究、トレーニングの設計、選手の立ち位置、プレスの角度、攻撃の侵入エリアまで、極めて細かくこだわることで知られています。
そのため、ビエルサ監督のチームは、良い時には圧倒的なエネルギーを持ちます。
しかし一方で、要求水準が高すぎるため、選手にとっては非常にきついチームにもなります。
ビエルサ監督は、優しいモチベーターというより、選手に限界近くまで走ること、考えること、戦うことを求める監督です。
だからこそ、ビエルサ監督の評価はいつも極端です。
信奉者からは「戦術の天才」と呼ばれます。
一方で、チームが上手くいかなくなると「選手を疲弊させる」「人間関係が難しい」「理想が強すぎる」と批判されます。
この両面性こそが、ビエルサ監督を語るうえで最も重要なポイントです。
ビエルサ監督の戦術的特徴
ビエルサ監督の戦術を一言で表すなら、前から奪って、縦に速く攻めるサッカーです。
ただし、単なる根性論のハイプレスではありません。
誰が誰を捕まえるのか、どの方向に追い込むのか、どこでボールを奪うのか、奪った後にどこへ運ぶのかまで細かく設計されています。
特徴①:マンツーマン気味のハイプレス
ビエルサ監督の守備は、かなりマンツーマン色が強いのが特徴です。
相手のビルドアップに対して、近くの選手が担当を捕まえ、自由に前を向かせません。
相手センターバック、アンカー、インサイドハーフ、サイドバックに対して、ウルグアイの選手が前へ出て圧力をかけます。
狙いは、相手に余裕を与えず、ミスを誘発し、高い位置でボールを奪うことです。
- 相手のビルドアップを自由にさせない
- 前向きのパスを出させない
- サイドへ追い込んで奪う
- 奪った瞬間にゴールへ向かう
- 守備を攻撃の始まりにする
特徴②:奪った瞬間の縦攻撃
ビエルサ監督のチームは、ボールを奪った後の判断が非常に速いです。
横パスで落ち着かせるよりも、相手の守備が整う前に縦へ進むことを重視します。
ウルグアイであれば、ダルウィン・ヌニェスのスピード、フェデリコ・バルベルデの推進力、ウガルテのボール奪取力、ベンタンクールの前進能力が重要になります。
特にバルベルデは、ビエルサ監督のサッカーに非常に合う選手です。
走力、強度、ミドルシュート、縦パス、守備範囲の広さを兼ね備えているため、中央でも右寄りでもチームのエンジンになれます。
特徴③:攻撃時に人数をかける
ビエルサ監督のサッカーは、攻撃時に多くの選手が前へ出ていきます。
そのため、攻撃が上手くいけば相手を押し込み、波状攻撃を続けることができます。
しかし、攻撃に人数をかけるということは、ボールを失った時に背後にスペースが残るということでもあります。
つまり、ビエルサのサッカーは常にリスクとセットです。
戦術的な本質 ビエルサ監督のチームは「安全に守ってから攻める」のではなく、攻撃的に守り、守備から攻撃へ一気に移るチームです。
ビエルサラインとは何か
ビエルサ監督は、単に情熱的な監督ではありません。
むしろ、非常に優れた分析官型の指導者です。
その象徴として語られるのが、ビエルサラインです。
ビエルサラインとは、ゴールポストとペナルティーエリアの角を結んだラインを基準に、シュートの成功確率やプレー選択を整理する考え方です。
簡単に言うと、ペナルティーエリア付近でボールを持った選手が、
- 縦に突破してクロスを上げるのか
- 斜めに侵入してシュートやラストパスを狙うのか
- 中へ切れ込んで巻いたシュートを狙うのか
この判断をする時に、ビエルサラインが一つの目安になります。
ビエルサラインは、シュートが入りやすい場所と入りにくい場所を分けるための、エリア戦術的な目安です。
厳密な意味でのxGモデルというより、選手がどのエリアから何を選ぶべきかを整理するための戦術的な基準と考えると分かりやすいです。
この考え方が面白いのは、ビエルサ監督の戦術が「走れ」「戦え」だけではないと分かる点です。
ビエルサ監督は、どのエリアに入れば得点確率が高まるのか、どの角度ならシュートよりパスが有効なのか、どの場所ならドリブルで仕掛けるべきなのかを、かなり細かく考えています。
つまり、ビエルサ監督は情熱の監督であると同時に、確率と構造を見ている監督でもあります。
ウルグアイ代表をどう作り替えてきたのか
ビエルサ監督がウルグアイ代表監督に就任したのは2023年です。
ウルグアイは長く、オスカル・タバレス監督のもとで堅守、球際、勝負強さを武器にしてきました。
スアレス、カバーニ、ゴディン、ムスレラらを中心に、ウルグアイらしい粘り強いチームを作ってきたわけです。
しかし、2022年W杯では決勝トーナメント進出を逃し、世代交代が大きな課題になりました。
そこでウルグアイが選んだのが、アルゼンチン人のビエルサ監督でした。
新しい中心はバルベルデ世代
ビエルサ監督のウルグアイでは、スアレス、カバーニ世代から、バルベルデ、ヌニェス、ウガルテ、ベンタンクール、アラウホ、ヒメネスらを中心とした新しいチームへ移行しています。
特に重要なのは、フェデリコ・バルベルデです。
バルベルデは、ビエルサ監督が求める強度、走力、攻守の切り替え、縦への推進力を持っています。
ウルグアイが前から奪い、素早く攻めるチームになるうえで、バルベルデは中盤の心臓です。
- バルベルデ:推進力、走力、ミドルシュート、中盤の柱
- ウガルテ:ボール奪取、守備範囲、プレスの強度
- ベンタンクール:前進、パス、試合の落ち着き
- ヌニェス:背後へのスピード、カウンターの脅威
- アラウホ:対人守備、スピード、最終ラインの強度
- ヒメネス:経験、守備の統率、空中戦
ウルグアイを「待つチーム」から「奪いに行くチーム」へ
従来のウルグアイは、強固な守備ブロックを作り、球際で戦い、少ないチャンスを決め切るチームという印象が強くありました。
もちろん、その勝負強さはウルグアイの大きな武器です。
しかしビエルサ監督は、そこに前から奪いに行く攻撃性を加えようとしました。
つまり、ウルグアイの伝統的な闘争心に、ビエルサ流のハイプレスと高速攻撃を組み合わせようとしたわけです。
うまく機能すれば、ウルグアイは非常に怖いチームになります。
球際に強く、走れて、奪った瞬間にバルベルデやヌニェスがゴールへ向かう。
相手からすると、かなり嫌なチームです。
北中米W杯で見えるビエルサ・ウルグアイの理想と現実
ただし、ビエルサ監督の理想は、W杯本番で簡単に実現するものではありません。
ウルグアイは、グループステージで勝ち切れない試合が続きました。
サウジアラビア戦、カーボベルデ戦では、内容的に勝てた部分がありながら、結果として勝ち点を取り切れませんでした。
ビエルサ監督自身も、得点機会を決め切れなかったこと、守備のミスが出たことに不満を示しています。
ここが重要 ビエルサ・ウルグアイの問題は、単に「攻撃的すぎる」ことではありません。
むしろ、攻撃的に戦うための精度、守備の整理、選手のコンディション、人間関係が同時に問われている点にあります。
課題①:プレスを外された時のスペース
ビエルサ監督のチームは、前から人を捕まえに行きます。
この守備は、相手を苦しめる一方で、外された時のリスクが大きくなります。
特に、相手がスペインのようにボールを動かすのが上手いチームであれば、プレスをかわされると一気に背後を使われます。
そのため、ビエルサ監督はスペイン戦前に、守備の重要性を認めながらも、単に引いて守るのではなく、相手にボールを持たせる時間を減らすことが大事だという趣旨の発言をしています。
これは非常にビエルサらしい考え方です。
ビエルサ監督にとって、守備とは後ろに下がることだけではありません。
相手の保持時間を削り、自分たちがボールを持ち、前から圧力をかけることも守備なのです。
課題②:ヌニェスをどう活かすか
ダルウィン・ヌニェスは、ビエルサ監督のサッカーに合う要素を持っています。
スピードがあり、背後へ走れ、相手DFに圧力をかけられる選手です。
しかし、W杯のように相手が慎重に守る大会では、ヌニェスが広いスペースを得られない場面も増えます。
そうなると、ヌニェスはシュート精度、ポストプレー、味方との連係を問われます。
ビエルサ監督の理想では、ヌニェスは単なるCFではなく、相手の最終ラインを広げる存在です。
ただし、ウルグアイが押し込んだ時にどう崩すのかという点では、まだ整理が必要です。
課題③:選手との距離感
ビエルサ監督は、戦術的には非常に魅力的な監督です。
しかし、人間関係の面では難しさもあります。
ウルグアイでは、ルイス・スアレスがビエルサ監督のコミュニケーションやチーム内の雰囲気について批判的な発言をしたこともありました。
また、海外メディアでは、W杯中のウルグアイにチーム内の緊張があるとも報じられています。
もちろん、チーム内の問題は外からすべて分かるものではありません。
ただ、ビエルサ監督のチームでは、要求の高さが選手の成長につながる一方で、結果が出ない時には不満や疲労感として表に出やすいのも事実です。
日本でのビエルサ監督の評価
日本では、ビエルサ監督はサッカー戦術好きの間で非常に人気があります。
特に、リーズ・ユナイテッド時代のハイプレス、運動量、攻撃的なサッカーを見て、ビエルサ監督に興味を持った人も多いと思います。
また、日本でビエルサ監督の名前が広く知られるきっかけの一つとして、影山優佳さんの存在もあります。
影山優佳さんが好きな監督としても知られる
影山優佳さんは、サッカーに詳しいタレントとして知られています。
過去のインタビューでは、ビエルサ監督の戦術に興味を持ち、そこからリーズ・ユナイテッドにも魅力を感じるようになったと語っています。
これは非常に面白い現象です。
日本では、選手からクラブを知る人が多い一方で、影山さんは監督の戦術からクラブに興味を持ったわけです。
日本での見られ方 日本のサッカーファンにとってビエルサ監督は、単なる外国人監督ではなく、「戦術を知る楽しさ」を教えてくれる存在でもあります。
ビエルサ監督のサッカーは、初心者には少し難しく見えるかもしれません。
しかし、プレスのかけ方、ボールを奪う場所、攻撃するエリア、選手の立ち位置を一つずつ見ていくと、サッカー観戦が一気に面白くなります。
その意味で、ビエルサ監督は戦術ブログと非常に相性の良い監督です。
母国アルゼンチンでの評価
ビエルサ監督の母国アルゼンチンでの評価は、非常に複雑です。
アルゼンチン代表監督としては、2002年W杯で優勝候補と見られながらグループステージ敗退を経験しました。
この失敗は、今でもビエルサ監督を語るうえで避けられません。
しかし、その一方で、2004年アテネ五輪では金メダルを獲得しています。
さらに、アルゼンチン国内では、ビエルサ監督は単なる代表監督ではなく、指導者思想そのものに影響を与えた人物として見られています。
タイトル数以上に大きい影響力
ビエルサ監督の面白いところは、タイトル数だけを見ると、歴史上最高の監督とは言いにくい点です。
しかし、影響力で見ると、間違いなく現代サッカーを変えた監督の一人です。
グアルディオラ、ポチェッティーノ、シメオネ、サンパオリなど、ビエルサ監督から影響を受けたと語られる指導者は多くいます。
つまり、アルゼンチンではビエルサ監督は、成功と失敗の両方を背負った存在です。
W杯での失敗を批判されながらも、戦術思想や育成面での影響力は非常に大きい。
この矛盾した評価こそが、ビエルサ監督らしさです。
- 2002年W杯の失敗を背負う監督
- 2004年五輪金メダルの監督
- ニューウェルズの象徴的指導者
- 多くの監督に影響を与えた思想家
- 結果以上にサッカー観を変えた人物
ウルグアイ国内での評価
ウルグアイ国内でのビエルサ監督の評価も、やはり一枚岩ではありません。
就任当初は、ウルグアイの才能ある世代をビエルサがどう変えるのか、大きな期待がありました。
実際、南米予選ではアルゼンチンやブラジルを相手に印象的な試合を見せ、ウルグアイの新しい可能性を感じさせました。
ウルグアイの闘争心に、ビエルサの攻撃性が加われば、かなり面白いチームになる。
そうした期待があったわけです。
期待と不安が同時にある
しかし、W杯本番で勝ち切れない試合が続くと、評価は一気に厳しくなります。
ウルグアイは人口が少ない国でありながら、世界屈指のサッカー大国です。
そのため、国民のサッカーを見る目は非常に厳しいです。
ウルグアイではよく「国民全員が監督」と言われるほど、代表への関心が高い国です。
ビエルサ監督のように理想が強い監督が結果を出せないと、戦術、選手起用、コミュニケーション、練習強度まで細かく議論されます。
ウルグアイでのビエルサ評価は、「新しいウルグアイを作る名将」と、「ウルグアイらしさを壊しかねない危うい監督」の間で揺れていると言えます。
海外メディアはビエルサ・ウルグアイをどう見ているか
海外メディアは、ビエルサ監督を非常にドラマチックに扱います。
その理由は、ビエルサ監督が単なる戦術家ではなく、物語性の強い人物だからです。
理想を追い求める監督。
選手に厳しく要求する監督。
名将に影響を与えた監督。
しかし、タイトル数では評価が分かれる監督。
そして、W杯ではいつも何かが起きる監督。
海外メディアにとって、ビエルサ監督は非常に記事にしやすい存在です。
Reutersの見方
Reutersは、ビエルサ監督のウルグアイについて、W杯での勝ち点の取りこぼしや、スペイン戦の重要性を大きく取り上げています。
サウジアラビア、カーボベルデ相手に勝ち切れなかったことで、スペイン戦は事実上の決勝のような試合になりました。
この報道では、ビエルサ監督が単に守るのではなく、スペインのボール保持時間を減らし、自分たちが主導権を握ろうとしている点が強調されています。
Guardianの見方
Guardianは、より人間関係や物語性に注目しています。
特に、スペイン代表監督ルイス・デ・ラ・フエンテとビエルサ監督の関係性、ウルグアイ内部の緊張、スアレスの批判などを含めて、ビエルサ・ウルグアイを「戦術だけではない問題」として描いています。
これは、ビエルサ監督を理解するうえで重要です。
ビエルサ監督のチームは、戦術だけでなく、選手の心理、監督との距離感、国民の期待まで含めて見ないと分かりません。
ウルグアイ国内メディアの見方
ウルグアイ国内メディアは、より現実的です。
スペイン戦前には、選手たちがより現実的な戦い方を求めたという報道もありました。
これは、ビエルサ監督の理想と、選手たちが感じるW杯本番の現実との間にズレがあることを示しています。
ただし、これを単純に「反乱」と見るのは早いです。
むしろ、W杯という極限状態で、どう勝つかを巡って議論が起きていると考えるべきです。
- Reuters:勝ち点の取りこぼし、スペイン戦の重要性、戦術的修正に注目
- Guardian:ビエルサの人物像、選手との関係、スアレス批判など物語性に注目
- El Observador:ウルグアイ国内の視点から、選手の不満や戦い方の議論を報道
- スペイン系メディア:スペイン戦を前に、ビエルサの理想と現実の衝突を強調
ビエルサ・ウルグアイの強み
ここまで課題も多く挙げましたが、ビエルサ・ウルグアイには明確な強みがあります。
強み①:中盤の強度が高い
バルベルデ、ウガルテ、ベンタンクールが揃う中盤は、世界的に見てもかなり強力です。
ボールを奪える、前に運べる、走れる、戦える。
ビエルサ監督のハイプレスを成立させるために必要な要素が揃っています。
強み②:奪ってからの迫力
ウルグアイは、ボールを奪ってから一気にゴールへ向かう力があります。
ヌニェスのスピード、バルベルデの推進力、サイドの選手の突破力が噛み合えば、相手はかなり怖いはずです。
強み③:ウルグアイ伝統の勝負強さ
ウルグアイは、昔から大舞台で粘るチームです。
ビエルサ監督のサッカーが理想通りに機能しなくても、球際、闘争心、セットプレー、個の強さで試合を動かせる可能性があります。
これは、ビエルサ監督が他国で率いたチームとは違うウルグアイならではの武器です。
ビエルサ・ウルグアイの弱点
弱点①:プレスの裏を使われる
前から行くチームである以上、プレスを外された時の背後は常に弱点になります。
特にスペインのように、短いパスで圧力を外せるチームには注意が必要です。
弱点②:攻撃が単調になる時間がある
縦に速い攻撃は魅力的ですが、相手が低い位置で守ると、スペースがありません。
その時に、どうやって中央を崩すのか、サイドからどう侵入するのか、ビエルサライン周辺でどのプレーを選ぶのかが重要になります。
弱点③:選手の消耗が大きい
ビエルサ監督のサッカーは、とにかく強度が高いです。
短期決戦では勢いを生みますが、連戦になると疲労や怪我のリスクが高まります。
W杯では移動、気候、試合間隔も影響するため、ビエルサ式の強度をどこまで維持できるかが大きなポイントです。
ビエルサ監督は名将なのか
ビエルサ監督を名将と呼ぶべきかどうかは、評価基準によって変わります。
タイトル数だけで見れば、グアルディオラ、アンチェロッティ、モウリーニョのような監督とは違います。
しかし、戦術思想、指導者への影響、チームを変える力で見れば、ビエルサ監督は間違いなく名将です。
ビエルサ監督は、サッカーを勝敗だけでなく、構造として見る面白さを教えてくれます。
どこで奪うのか。
どこに運ぶのか。
どのエリアでシュートを打つのか。
どのラインを越えたら得点確率が上がるのか。
そうしたサッカーの細部を、観る側にも考えさせてくれる監督です。
結論 ビエルサ監督は、タイトル数以上にサッカーの見方を変えた監督です。
まとめ|ビエルサのウルグアイは理想と現実の間で戦っている
マルセロ・ビエルサ監督は、情熱的で、分析的で、厳格で、そして非常に魅力的な監督です。
ウルグアイ代表では、バルベルデ、ヌニェス、ウガルテ、ベンタンクールらを中心に、新しい時代のチームを作ろうとしています。
その方向性は、従来のウルグアイらしい堅守速攻に、ビエルサ流のハイプレスと縦に速い攻撃を加えるものです。
しかし、W杯本番では、理想だけでは勝てません。
守備のミス、得点力、選手の消耗、人間関係、現実的な戦い方。
ビエルサ・ウルグアイは、まさに理想と現実の間で揺れています。
ただ、それこそがビエルサ監督の面白さでもあります。
完璧ではない。
時に危うい。
それでも、サッカーを深く考えさせてくれる。
ビエルサ監督のウルグアイを見ることは、単に一つの代表チームを見ることではありません。
サッカーにおける理想、戦術、確率、情熱、そして人間関係がどこまで噛み合うのかを見ることなのです。
参考記事・出典
- ビギナー向け!サッカーの戦術ブログ|ビエルサラインかポケットか!?
- Sportiva|影山優佳のサッカー愛。夢は通訳なしでビエルサ監督にインタビュー!
- Reuters|Uruguay's potential enticed Bielsa to accept coaching job
- Reuters|Lamine starts as Spain make three changes for Uruguay clash
- Reuters|Bielsa says Uruguay face Spain 'final'
- The Guardian|Bielsa's first meeting with former pupil De la Fuente
- El Observador|Marcelo Bielsa conferencia antes del partido Uruguay vs España